40歳を目前に挑戦を続ける名手ダレッサンドロ。「永遠の少年」のいま【南米サッカー秘蔵写真コラム】

2021年02月04日 ハビエル・ガルシア・マルティーノ

彼の頭の中に「引退」という言葉はなかった

アルゼンチン代表の一員として戦う若き日のダレッサンドロ。ここから時は過ぎたが、彼は一線級を離れようとはしていない。 (C) Javier Garcia MARTINO

 アンドレス・ダレッサンドロは、今年からウルグアイの名門ナシオナルでプレーすることを決断した。39歳というサッカー選手としては高年齢でありながらサッカー大国の強豪クラブに移籍するケースは珍しく、アルゼンチンではこれまで例がなかったように思う。

 アルゼンチンにおけるリーベルプレートやボカ・ジュニオルス同様、ウルグアイではナシオナルとペニャロールに所属すること自体が多大なプレッシャーを背負うことを意味する。ゆえにベテランの域に達した選手がチームのために、有効なパフォーマンスを見せられなければ、サポーターたちからはすぐに「クラブから金をとるために来たのか」と厳しい見方をされる。

 ましてやナシオナルは財政難からの再建途中にあり、下部組織出身の選手たちを率先して起用する方針をとっている。新戦力として迎え入れられるダレッサンドロに対するプレッシャーが、なおさらシビアになるのは想像に難くない。

 昨年12月、ダレッサンドロが12年間所属したブラジルのインテルナシオナルを退団したというニュースを聞いた時、私はてっきり引退するのだろうと思った。というのも、彼は昨年2月にブラジル全体がコロナ禍に陥ってから炊き出しをはじめとする様々なチャリティ運動を積極的に行ない、さらに「DALE10」という名の独自ブランドを立ち上げ、大手文具メーカーとコラボ商品を作るなど、ピッチ外での活動を盛んに行っていたからだ。

 インテルナシオナルのホームタウンであるポルトアレグレでは知名度も人気も高いダレッサンドロには、カリスマ性もある。クルゼイロでキャリアを終えたあと、しばらくブラジルのテレビ局でスポーツキャスターとして活躍していたフアン・パブロ・ソリン(元アルゼンチン代表DF)のように、そのままブラジルに根付いて、サッカーと関わりながらも他の分野でも十分やっていけそうな器だ。

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 だが、彼の頭の中に「引退」という言葉はなかった。しかも決して楽ではない環境を選んだところに、なんとなく「ダレッサンドロらしさ」を感じた。それは20年前にアルゼンチンでプレーしていた頃から醸し出していた「永遠の少年」のような無垢な空気を今も出し続けているからだ。

 2001年、母国で開催されたU-20ワールドカップでホセ・ペケルマン監督の指揮の下、見事に優勝した時も、翌年にリーベルプレートのメンバーとしてリーグ制覇した時も、ダレッサンドロはまるで10代半ばの少年のような雰囲気を漂わせていた。

 3年ほど前には、チームに容赦のないブーイングを浴びせるインテルナシオナルのサポーターにキャプテンとしてたったひとりで立ち向かって怒鳴っていた様子を見て、すぐに腹を立てけんか腰になってしまう性格も相変わらずだなと、思わず微笑んだこともある。

 勝つことが義務付けられ、タイトル獲得が最低条件となるナシオナルを新天地に選んだダレッサンドロ。4月で40歳になる名手のウルグアイでの新しいチャレンジを応援したい。

文●ハビエル・ガルシア・マルティーノ text by Javier Garcia MARTINO
訳●チヅル・デ・ガルシア translation by Chizuru de GARCIA

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