【指揮官コラム】チェンマイFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|タイの交通事情に思うタイサッカーのポテンシャル

2015年04月14日 サッカーダイジェストWeb編集部

道路はレースのような状況でも、なぜか事故が起きない。

「ソンクラーン フェスティバル」で、街は水を掛け合う人で溢れている。その傍を多くの車やスクーターが駆け抜けていく。

 4月13日から15日かけて、こちらでは「ソンクラーン フェスティバル」が行なわれている。国民の休日ともなっているこのお祭りは「水かけ祭り」とも言い、道を歩いている人々が互いに水を掛け合って楽しんでいる。
 
 タイ人にとって、このお祭りは国民的行事で、仕事や学校に行くことはあり得ないという。それはもちろん、サッカー関係者にとっても同じことで、19日からカップ戦が始まり、22日にはリーグ戦があるにもかかわらず、13~15日の間はオフにしなければならない。ここではプロ選手のマネジメントさえタイ式であり、優先権は国民の休日にある。
 
 日本で言えば、ゴールデンウィークにJリーグをストップさせて、皆、田舎に帰って休んだり、家族と過ごしたりするということだ。ゴールデンウィークはサポーターも観戦に訪れやすくなり、多くの入場者を見込めるのに、そうは考えないということだ。チームをマネジメントする立場としては非常に難しい風習、習慣でもある。
 
「本当にそれで良いのか?」と聞けば、「もし休みをやらなければ皆、怒ってしまう!」と言う。それは選手だけでなく、タイで生まれ育ったすべての人々がそうなのだ。クラブで言えば、オーナー以下、すべてのスタッフも同じなのだろう。タイプレミアリーグでACLに出場するクラブまでそうなのかは分からないが、ちょっと日本では考えられないことかもしれない。
 
 もうひとつ、タイと日本では大きな文化の違いがある。それは交通事情だ。ただし、これはタイだけではなく、世界と日本の違いとも言えるだろう。
 
 もちろん左右どちらが通行帯になるのかは国によって異なるが、それを除けば交通ルールはだいたい世界共通のものだろう。しかし、留学時代のブラジルでもそうだったが、ここチェンマイでも人々の交通ルールに対する感覚には驚きを感じている。正直なところ、驚きと同時に感心している自分もいる。
 
 ブラジルでは、さすがアイルトン・セナが育った国だけあって、街ゆく車はレースのようなスピードで駆け抜けていく。僕の留学当時は治安も悪く、夜の赤信号は本当に怖いものだった(あれから30年経って、来年にはリオ五輪も開催されるのだから、今は違うと信じたいが……)。赤信号は進め、青信号は注意して渡れ、だった。
 
 では、ここチェンマイではどうか? やはり道路を走る車両はブラジルと同じくらいスピードを出す。ただし、車両と言ってもそれは概ねオートバイのことで、その数は半端なく多く、さながらルール無用のチキチキマシーン大レースが公道で展開されているようなものだ(そこではYAMAHA、HONDAのバイクを日本より多く目にする)。制限速度もはっきり表示されず、もはや車線もよく判別できない道路を、ヨーイドンでスタートしていく。
 
 道幅を埋めるほどバイクが走り、2人乗りは当たり前で4人乗りや5人乗りも見たことがある。一回の信号待ちの時間も長いため、守らない人が多く、ノーヘルも目立つ。
 
 しかし、こんな環境でありながら僕はチェンマイに来てからの3か月、道路を通行していて大きな事故に遭遇したことは一度もない。日本では事故も、事故処理もけっこうな頻度で目にするが、不思議なことにここではまったくお目にかかっていない。
 
 そこでひと言。
自分の身は自分で守れ。ルールは決して自分を守ってくれない。

次ページタイ人は先を読む力に優れている!

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事