連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】ともに勝ち切れなかった川崎と浦和 克服すべきは?

2015年04月13日 熊崎敬

お互いに勝利を手繰り寄せられない物足りなさ。

ともに勝ち切れなかった川崎と浦和。本質的な課題が浮き彫りに。 (C) SOCCER DIGEST

 優勝候補が激突した川崎と浦和の一戦は、1-1の引き分けに終わった。
 
 前半は川崎がボールを支配し、浦和が自陣を固めて逆襲を狙うという構図。その流れの中で35分、川崎の森谷が先制点を奪う。
 後半は同点を狙う浦和が、一方的に川崎を押し込んだ。サイドから積極的に仕掛け、アディショナルタイム突入直前の89分、FKからズラタンがヘッドを突き刺す。
 
 終盤に追いついた浦和も、後半に押し込まれた川崎も負けなかったことを良しとすべきかもしれない。だが、こういう試合で勝利を手繰り寄せられないところは物足りない。
 
 浦和は得点力に課題を残した。
 前節の松本戦で私は「決めただれかがストライカー」ではなく、「ストライカーが決める試合」の重要性について書いたが、この一戦がまさにストライカーが決めるべきゲームだった。
 
 川崎のような力のあるチームと戦えば、浦和でも敵をゴール前に釘付けにする試合はできない。必然的にサイドアタックからズラタンを狙ったクロスという形になる。そうでなければ、サイドアタックから得たCK、FKを決めるしかない。
 
 いつものように手数をかけた的の多い攻撃ができないため、ゴールへの期待(とマーク)は必然的にCFのズラタンに集中する。こうなると、あとはストライカーが決めるか決めないか、だ。結果的にズラタンは同点弾を決めたが、それは最低限の仕事だった。
 11人を補強して今季に臨む浦和だが、サッカーの肝であるゴールを決めるところは手つかずに近い。これでは取りこぼしは減らないだろう。
 
 一方の川崎は、最後までエンジンが温まらなかった。
 ボールを失わないこと、確実に敵の背後を取っていくことでは、彼ら以上のチームは見当たらない。後半のプレーについて風間監督は守りに入ったわけではないと語り、私もそのうちレナトに決定的なパスが出るだろうと思って見ていたが、狂った歯車が元に戻ることはなかった。
 
 記者会見で風間監督は「技術と戦術眼を上げれば解決できる」と語った。確かに10番の資質を持った選手がピッチ中に散らばった川崎は、多少のプレッシャーにはまったく動じないし、敵を外してボールを運ぶ技術とアイデアを備えている。
 
 だが、この万能さが落とし穴になるかもしれない。サッカーは良くも悪くもいい加減な人間のやることであり、いつも川崎のリズムで進められるとは限らないからだ。
 技術と戦術に優れたチームほど、それが上手くいかないときの戸惑いは大きくなる。そこで何ができるか問われるのが、サッカーではないだろうか。
 
 浦和と川崎。タイトルに手が届きそうで届かない彼らにとって、克服すべきものは少なくない。
 
取材・文:熊崎敬

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