なぜフィジカル重視のヘタフェが久保建英を獲得したのか? サイクルの終焉が迫る指揮官が決断した“方針転換”【現地発】

2021年01月15日 エル・パイス紙

ボルダラス就任から4年半で危険領域をすでに越えている

ハードワークをベースにした堅守がモットーのボルダラス監督(右)が久保の獲得を望んだワケは? (C)Getty Images

 ラ・リーガでコロナによる中断の影響をモロに受けたのがヘタフェだ。昨年3月に中断した時点で5位につけチャンピオンズ・リーグ出場権獲得を視野に入れていたが、再開を境に快進撃がストップ。その後の11試合で白星を挙げたのは1度だけ、残り10試合は5分け5敗という成績に終わった。

 今シーズンも17節終了時点では、5勝5分け7敗。コパ・デル・レイで2部B(実質3部)のコルドバに0-1で敗れて2回戦敗退の憂き目にあった。

 成績の悪化はそのままパフォーマンスの劣化に換言される。端的なのは、最大の持ち味であるスピリットを失っている点だ。ヘタフェの戦術の狙いは相手の強みを出させないことを基点にしており、ファールで攻撃のリズムを崩すのもお手の物だ。

 しかし肝心のインテンシティが低下し、自分たちのペースで試合を進めることができなくなっている。それは前線からのプレス、相手陣地でのボール奪取、スペースのケアといった様々な面に波及し、持ち味の堅守が崩れる結果となっている。

【動画】2点に絡む大活躍!ヘタフェ久保建英の圧巻デビュー戦はこちら
 サッカー界には同じ監督が指揮し、陣容に大きな変化がない場合、「3、4年サイクル説」という考え方がある。ヘタフェはホセ・ボルダラス政権が誕生してから4年半近くが経過し、その危険領域をすでに越えているが、昨夏コロナ禍の影響もあり、監督の交代は見送られ、補強も最小限に留まった。

 実際、ホルヘ・モリーナがグラナダに移籍し、エネス・ウナルとクチョ・エルナンデスが加入した前線を除いて陣容は昨シーズンとほぼ同じままだ。システムも開幕以来、4-4-2を継続して採用。しかし選手たちは要求レベルの高いボルダラス監督仕様の戦術を以前のレベルで遂行することができず、指揮官も改善策を施せないままだった。

 1年前はヘタフェが相手に疲弊させていたのが、今や自分たちが心身両面で消耗してしまっている。そしてこのチーム全体のムスクロ(筋肉)疲労という窮状に直面する中、クラブが提示した解決法が、新たな血を注入することだった。

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