プレミア初昇格が目前! 快進撃を続けるボーンマスがいま熱い

2015年04月08日 マッシモ・ルッケージ

躍進の立役者は、37歳の若き指揮官エディ・ハウ。

2部のチャンピオンシップで首位を走るボーンマス。初のプレミア昇格が現実味を帯びるこのスモールクラブに、イタリア人戦術アナリストが迫る。 (C) Getty Images

 イングランド2部のチャンピオンシップ(フットボールリーグ・チャンピオンシップ)で旋風を巻き起こしているAFCボーンマスは、とても興味深いチームだ。
 
 ホームタウンのボーンマスは、ロンドンの南西150キロほどの海沿いにある、保養地として有名な都市。クラブの創立は1890年と長い歴史を誇るが、そのほとんどを3部、4部で過ごしてきた。トップリーグはおろか2部でさえ、ハリー・レドナップ(前クイーンズ・パーク・レンジャーズ監督)がチームを率いた1980年代後半の3シーズン(87-88~89-90)しか経験したことがなかった。
 
 しかし、2012-13シーズンにフットボールリーグ1(3部)で2位に入り、クラブ史上二度目の2部昇格を実現する。そして昨シーズンに10位と余裕をもって残留を果たすと、2年目の今シーズンは序盤戦から首位争いに絡み、歴史的なプレミアリーグ昇格まであと少しというところまできている。
[編集部・注/4月8日現在でボーンマスは1位。2位ノーリッジと3位ワトフォードが勝点1差、4位ミドルスブラが勝点2差で迫る。チャンピオンシップの上位2チームがプレミアリーグに自動昇格。3~6位による昇格プレーオフを勝ち抜いた1チームも昇格する]
 
 近年の躍進の立役者は、37歳の若き指揮官エディ・ハウ。現役時代にクラブのシンボル的存在だった青年監督は、イングランドでは珍しい、ショートパス主体のポゼッションサッカーをチームに植え付けた。
 
 ハウは、つねにポゼッションによってボールと地域を支配する戦い方を好む。ただしそれは、決して「ポゼッションのためのポゼッション」ではない。相手を動かして守備ブロックに穴を空け、そこからスルーパスやコンビネーションによって、あるいはサイドアタックによってフィニッシュに結びつけるための手段。そういう位置づけだ。
 
 基本システムの4-4-2は、2トップの息の合ったコンビネーションプレーと、両サイドの"縦のペア"のクオリティの高さによって特徴づけられる。
 
 2トップを組むのはカラム・ウィルソンと、ブレット・ピットマンもしくはヤン・ケルモルガン。中核のウィルソンは高度なテクニックを備えたセカンドトップで、得点力に加えて狭いスペースでのドリブル突破やアシストも得意とする。ポストプレーヤータイプのピットマン、ケルモルガンとの相性は抜群だ。
 
 中盤での細かいパス回しから、ウィルソンがボールを受けて2ライン(DFとMF)間で前を向き、ワンツーで裏に抜け出すプレーは典型的な得点パターンのひとつ。ここまでこの3人で、43ゴールをマークしている。
 
 サイドの縦のペアは、右がサイモン・フランシスとマット・リッチー、左がチャーリー・ダニエルズとマーク・ピューという組み合わせ。
 
 リッチーとピューの両ウイングはともに逆足で、サイドから内に向かってダイアゴナルに仕掛けたり、2トップとのコンビネーションでフィニッシュに絡む。小柄でスピードのあるリッチーはここまで11得点・15アシスト、ピューは8得点・6アシストを記録。ライン際を深くえぐってクロスを供給するのは主にSBの仕事で、フランシスとダニエルズは合わせて14アシストを挙げている。
 
文:マッシモ・ルッケージ
翻訳:片野道郎
 
【著者プロフィール】
マッシモ・ルッケージ
イタリア人の戦術アナリスト。イタリア・サッカー連盟の技術委員であり、コーチ向けのサイト『allenatore.net』も運営。技術書、戦術書の出版やWebコンテンツの配信、国内外でのコーチングセミナーの主催など活動は多岐に渡る。1968年1月25日生まれ。
 
(ワールドサッカーダイジェスト2015.4.16号より)
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