交通事故に遭ってトッテナムをクビに…リーズ撃破の番狂わせを起こした英4部クラブ戦士の壮絶キャリア

2021年01月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

「僕は一度、サッカーを諦めた…」

値千金のゴールを決めてリーズ撃破の立役者となったツォロウラ(右)は、激しい人生を歩んできた。 (C) Getty Images

 完璧なアップセットだ。現地時間1月10日に行なわれたFAカップ3回戦で、本拠地でリーズ・ユナイテッドを迎え撃った英4部のクローリー・タウンは3-0と完勝した。

 智将マルセロ・ビエルサが率いるプレミアリーグの名門を撃破したクローリー・タウン。4部リーグが設立された1958年以降で、トップリーグクラブが3点差をつけられて敗戦するのは通算2度目ということもあり、そのジャイアントキリングは小さくない話題となっている。

 まさに歴史的な番狂わせの立役者となったのが、貴重な先制点をもたらしたニコラス・ツァロウラだ。スコアレスで迎えた50分、敵陣でボールを持ちだすと、スルスルとエリア内に侵入。そして左足で渾身のショットをゴール右下隅へねじ込んだ。

 鮮やかなドリブル突破でチームに勢いをもたらしたツォロウラだが、そのキャリアは決して平たんではなかった。英スポーツ専門ラジオ局『talkSPORT』が興味深い人生に脚光を浴びせている。

 1999年3月にイングランドのブリストルで生まれたツォロウラは、11歳でトッテナム・ホットスパーのアカデミーに入団。その後も順調にステップアップを踏んでU-23チームまで駆け上がった。

 しかし、トップチーム昇格も見据えていた2017年に交通事故で大怪我を負ってしまうと、順調に進んでいたキャリアが暗転。17-18シーズンの終わりにはトッテナムをクビとなるのだ。
 
 失意の中での過酷なリハビリ生活を乗り越え、2019年5月にブレントフォード(英2部)と契約したツォロウラだったが、およそ1年のブランクを埋められずに20年の夏にチームを解雇されてしまう。

「一度は諦めた」という本人が、再起をかけて辿り着いたのが、クローリー・タウンだった。昨夏に6週間のトライアウトの末に契約を勝ち取ると、持ち前のポテンシャルを武器にチームの定位置をあっという間に確保したのだ。

 苦しい時間を過ごしてきた。それゆえに強敵リーズからゴールを奪う殊勝な活躍には、他でもないツォロウラ本人が感激している。試合後に英公共放送『BBC』のフラッシュインタビューに応じた21歳は、涙ながらにコメントしている。

「あの瞬間(交通事故)に僕はサッカーを諦めた。ここまで来るのは、本当に僕にとって長く困難な道のりだった。だから誇りに思えるよ。とてもエモーショナルだ……。ここまで来るのは難しかったんだ。今日のゴールはプロ初ゴールってだけじゃなくて、あまりに多くの意味がある」

 リーズを打ち破る一撃を放ち、イングランド・サッカー界にその名を刻んだツォロウラ。彼のこれからの人生にも注目したい。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

次ページ【動画】FAカップでジャイアントキリング! 英4部戦士ツォロウラのゴラッソはこちら

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事