今年は“発展途上”の青森山田。黒田監督も「まだまだだな」というチームが描く悲願達成へのストーリー【選手権】

2021年01月06日 森田将義

「ゲームプランとしては良い形での前半だったが、後半はまったりし過ぎた」

タビナス・ポール・ビスマルク(3番)のゴールで先制した青森山田。前半で4ゴールを奪った。写真:塚本凜平

[高校選手権準々決勝]青森山田4-0堀越/1月5日(火)/等々力

 前半14分に左CKから奪ったDFタビナス・ポール・ビスマルク(3年)の先制点を皮切りに、前半だけで4得点。試合を通じて打たれたシュートはわずか2本で、無失点にも抑えた。記録上では改めて、青森山田高の強さを感じさせる一戦となったが、試合を終えた選手たちの表情からは、喜びの色が見られない。ベンチに戻るなり、黒田剛監督から選手全員に対し、「こんなんでは話にならない」と厳しい指摘も受けた。

 黒田監督が「ゲームプランとしては良い形での前半だったと思うけど、後半はまったりし過ぎた」と振り返った通り、後半5分に得たPKを防がれてからは、プレーの精度を欠いた。また、DFが下がりすぎ、中盤が間延びした点や、交代で入った選手が、スタメンを奪い取るだけのアピールができなかった点も課題と言えるだろう。

 圧倒的な強さと共に、どこか脆さを感じるのは、今年はコロナ禍の影響により、チームの成熟が遅れているためだろう。例年なら、プレミアリーグでJのアカデミーや関東の強豪校に苦戦をする中で、課題を見つけて成長していくが、今年は9月以降に「スーパープリンスリーグ東北」を経験したのみ。攻撃の時間が長く、AチームもBチームもグループリーグを全勝で終えたため、課題が抽出しづらかった。

 今年のチームは発展途上であり、伸びしろを多く残しているため、選手権を戦いながら試合ごとの課題を成長に繋げていけるかが、ポイントになる。この日の試合後、黒田監督はこんな言葉を残している。
「3試合やって勝利しながら改善というか、『まだまだだな』という印象を残して試合を終われている。パーフェクトであるよりも、締めながら次に行けることを良しとしなければならない」

 実際に、ここまでの試合ごとに課題が見つかっている。初戦となった2回戦は守備を固める広島皆実に苦戦し、前半を無得点で終えた。続く3回戦の帝京大可児戦は、相手にボールを持たれる時間が多く、先制点を許した。

「プリンスリーグでは経験できなかった相手に先制されたり、ボールを保持されたりする試合を経験できている。強度がまったく違う。慣れていないことが多く、失点の場面を含め自分たちの甘さが出たのかなと思う。次の試合から、みんながアラートにして、絶対にゼロを続けたい」

 そう振り返るのは、タビナス・ポール・ビスマルクだ。全国の舞台を重ねながら、日々進化していくのが今年の青森山田が描くストーリーだが、そこには勝利も欠かせない。「結果をもって学んだかどうか、成長したかどうかは言える」と口にするのは、黒田監督だ。残り二つもしっかり勝って、逞しくなった姿、そして青森山田の強さを全国の人たちに見せつける。

取材・文●森田将義(フリーライター)

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