【ルヴァンカップ決勝】“強力な個”を抑えるには? 勝負の明暗を分けたFC東京と柏の決定的な差

2021年01月05日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「相手のストロングポイントを出させてしまったのが敗因だと思います」(瀬川)

中盤の味方と連係しながら、FC東京の森重(右)が柏の江坂(左)を抑え込んだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[ルヴァンカップ決勝]柏 1-2 FC東京/1月4日/国立競技場

 FC東京のレアンドロが見せつけたプレーは、誰が見ても明らかなほど半端なく上手かった。ルヴァンカップ決勝という大舞台で、柏の選手たちを超絶テクニックで翻弄。16分にはふたりの相手DFをかわし、左サイドから圧巻のカットインシュートを決めた。

 レアンドロのような"強力な個"は柏にもいる。リーグMVPとJ1得点王とダブル受賞したオルンガだ。だがルヴァンカップ決勝では、リーグ戦で披露したような圧倒的な個人技を見せられなかった。

 強力な個を完封したFC東京と、抑えられなかった柏。両チームの守備にはどんな違いがあったのか。柏の瀬川祐輔が語った反省の弁に、的確に表現されていた。

「守備の時に相手のストロングポイント、例えばレアンドロ選手とか、アダイウトン選手に対して、ひとりで対応することが多かった。そこはチームとして、ひとりから3人で囲んだり、助け合う部分ができていなかった。相手のストロングポイントを出させてしまったのが敗因だと思います」

 象徴的だったのがレアンドロに先制点を許した16分のシーン。タックルを試みたヒシャルジソンがあっさりかわされると、ワンテンポ遅れてカバーに入った大南拓磨もフェイントで剥がされた。どちらのディフェンスも単発で、そこに連係はなかった。例えば、ヒシャルジソンがタックルしたおかげで、レアンドロのタッチが大きくなった瞬間があったのだから、そこを大南がボール奪取を狙うべきだっただろう。それこそが守備のコンビネーションだ。

 一方でFC東京は、柏ができなかった守備の連係が抜群だった。CBでは渡辺剛とジョアン・オマリのチャレンジ&カバーが徹底れていて、中盤では森重真人、安部柊斗、東慶悟が助け合いながら江坂任を厳しくマーク。ひとりでは抑えるのが難しい"強力な個"を、複数のディフェンスで完封したのだ。

 オルンガと江坂に人数をかければ、当然ながらその他のゾーンで相手に余裕を与えてしまう危険性はある。そのリスクを背負ってでも、相手のキーマンを抑えることは重要だった。結果的には、敵のストロングポイントの封じ方が決定的な差となり、勝負の明暗を分けた。

 オルンガと江坂を抑えたFC東京の選手たちも、その堅守を構築させた長谷川健太監督の手腕も見事。ルヴァンカップ王者に相応しいチームとして、最大級の賛辞を送りたい。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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