「かけがえのない愛されるべき選手」。退団決定の“ミスターレイソル”へ、ネルシーニョ監督が心温まるメッセージ

2020年12月30日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「非常にチーム想いの選手。これまでもずっとそう見ていました」

ネルシーニョ監督が退団決定のGK桐畑和繁について語った。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 12月19日に行なわれたリーグ最終節の川崎戦後、ホームスタジアムで壇上に上がったGK桐畑和繁から、「突然の発表になりますが、ユースから含めて18年間、お世話になった柏レイソルと今シーズンをもってお別れすることになりました」と挨拶があった。

 約10分間に及ぶロングスピーチ。それをサポーターが涙ぐんで聞いている光景は、桐畑が柏にとっていかに大切な選手であるかを物語っているようだった。

 壇上で自ら話していたとおり、決して出場機会の多かったGKではない。それでも、こうして"愛される"選手となった理由はどこにあったのか。第1次政権時(2009年~14年)も含め合計8年間、ともに戦ってきたネルシーニョ監督が、思いやりを込めてその一端を語ってくれた。

「キリとは09年から15年も一緒に戦ってきました。言うまでもなく彼はプロフェッショナル。ピッチ内外でもフォア・ザ・チームの精神を持ってチームメイトに対して立ち振る舞うことができる。非常にチーム想いの選手。これまでもずっとそう見ていました」

 ひと言で言えば、柏と桐畑の関係性は相思相愛だろう。桐畑が柏に対して愛情を持っていたからこそ、サポーターからも愛される選手になった。その「チーム想い」の姿を指揮官はずっと見てきたと言う。
 スピーチのなかで桐畑が、言葉を詰まらせたあと、J2降格が決まった18年の自身のプレーについて謝る一幕があった。本人は申し訳ない気持ちが先行したのかもしれないが、たぶん柏を支える人々には良い記憶だって残っている。ネルシーニョ監督が振り返った。

「2014年、菅野(孝憲/現札幌)の調子があまり良くなかった時に、彼がレギュラーとして定着して、充実したシーズンを過ごしたと思います。ただ、彼がああやって話しているのを見て、改めて時間というものは、誰にとっても平等に与えられるものだと、自分自身も思いました」

 14年、24節の浦和戦で菅野の退場により途中出場し、以降は全試合に出場した。さらに11年も、菅野の負傷離脱時にゴールマウスを守り、J1優勝に貢献している。出番は少なくても、桐畑が輝いていたシーズンは間違いなくあった。

 桐畑のスピーチの内容、そしてネルシーニョ監督のコメントにもあるとおり、柏一筋を貫いてきた男の契約満了は、選手本人、監督、強化部も含め、全員が"プロフェッショナル"に判断した結果かもしれない。キャリアを積み重ねれば、別れは必ずある。

 それでも、ネルシーニョ監督は最後に心温まる言葉を残していた。

「彼がレイソルに在籍する選手じゃなくなったとしても、レイソルにとってはかけがえのない愛されるべき選手だと思います」

 柏一筋18年の大谷秀和には、よく「ミスターレイソル」という呼び名が付くが、たぶんその敬称は桐畑にも当てはまる。それは、今季最後の試合となる1月4日のルヴァンカップ決勝(対FC東京)を終えたあとも、永遠に、だ。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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