「正直、記憶がない」CLで人種差別発言を受けたカメルーン人コーチが胸中を激白「審判からあんな言葉を聞くなんて…」

2020年12月13日 サッカーダイジェストWeb編集部

「しばらく眠れなかった」と胸中吐露

コルテスク審判に鬼の形相で詰め寄るウェボ。この出来事に対する心境を振り返った。 (C) Getty Images

 欧州最高峰の舞台で起きたまさかの事態。その波紋はいまだに広がり続けている。

 世界的に物議を醸しているのが、現地時間12月8日にパリで開催されたチャンピオンズ・リーグ(CL)のグループステージ最終節、パリ・サンジェルマン対イスタンブール・バシャクシェヒル戦で起きた信じがたい騒動だ。

 開始わずか13分だった。味方の選手が受けたハードタックルについて抗議の声を上げたバシャクシェヒルのアシスタントコーチ、ピエール・ウェボに対し、第4審判を務めていたルーマニア人のセバスティアン・コルテスクが「黒人」という言葉を口にしたのだ。これが全ての原因となった。

 憤慨した元カメルーン代表FWは、「なぜ『黒人』と呼ぶんだ?」と繰り返し問いかけながら、文字通り鬼の形相でコルテスク審判に詰め寄り、一気に両軍ベンチを巻き込んだ大騒動に発展。結局、ウェボが退席処分(後に撤回)となったことと、審判団から明確な説明と謝罪が得られなかったために、両チームの合意の下で試合は中断され、そのまま翌日に延期となった。

 翌日の試合は5-1でパリSGが地力の差をみせつけて大勝。だが、中断翌日に母国メディアで「私はただ友好的に接しようと考えていただけだ」と釈明したコルテスク審判に反省の色は見られず、事態が収集したとは言いがたい。

 そうしたなかで、"当事者"の一人が重い口を開いた。他ならぬウェボが、英紙『Daily Mail』の取材に応じたのだ。

 騒動後から「しばらく眠れなかった」と明かしたウェボは、「今はあの時よりもずっと落ち着いてあらゆる声を聴けるようになった」と現状を報告。そのうえで、あの時の記憶を振り返っている。

「私は非常に攻撃的な態度を取っていた。後々、動画やニュースを見て、自分でも驚いた。正直言って、あんなに怒った自分は初めてだったし、記憶がほとんどないくらいに怒っていたんだ。ただ、とてもショックだったのは覚えているよ。まさか試合を統括する審判からあんな言葉を聞かされるなんて思ってもみなかったから受け入れがたいことだった」

 さらに愛息たちからも「パパ、ごめんよ。僕らが守ってあげなくちゃ」と言われたというウェボは、正直な胸の内も打ち明けている。

「チャンピオンズ・リーグの第4審判だよ? それは何よりもハイレベルで、人としても優れた人材が必要なはずだろ。もっと現場で発する言葉に重みをかけなければいけない。あらゆることに気を配る必要があるんだよ」

 最後に「形だけのキャンペーンはやめて、もっと大きく具体的な解決策をとるべきだ。UEFAやFIFAはもっと選手たちやスタッフたちの声に耳を傾けるべきだ」と語ったウェボ。「ようやく選手たちが真剣に向き合うようになっているけど、私が現役時代に受けていたことが今も続いているなんてね……」と切なげに声を落としていた。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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