【横浜|担当コラム】消化不良の印象を残すACL敗退。“自分たちのサッカー”を貫けたのか

2020年12月08日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

フィニッシュの精度に問題。それよりも気になったのが――

エリキ(17番)のゴールで先制も逆転負け。アジア初制覇の挑戦はラウンド16で終わった。(C)Getty Images

 決めるべきところで決められない。決定力不足が敗因のひとつではあるのだろう。

 エリキの得点で先制した前半に、2点差、3点差とリードを広げることは十分にできたはずだった。3分、高野遼のクロスに仲川輝人が飛び込み右足で合わせる。40分、ドリブルで持ち運んだエリキが、DFを巧みにかわして左足でシュート。いずれも決まっていてもおかしくない絶好機だった。

 痛恨だったのは、33分の場面だ。右サイドから仲川がクロスを入れる。相手の守備陣が対応を誤り、ゴールはほぼガラ空きの状態に。中でスタンバイするマルコス・ジュニオールはそこに押し込むだけだったが、シュートは枠の外。打った本人が驚きの表情を浮かべるほど、まさかの決定機逸だった。

 結局、1点リードで迎えた後半、攻勢を強めた相手の迫力に屈して3失点。終了間際に途中出場のオナイウ阿道が追撃弾を挙げるも、反撃もそこまでだった。

 前半のチャンスをしっかりとモノにしていれば――フィニッシュの精度に問題があったのは事実だが、それよりも気になったのが、アンジェ・ポステコグルー監督をはじめ、選手たちが口にする"自分たちのサッカー"を表現し切れていなかったのではないかということだ。

 相手の選手は、たいして激しくない接触プレーでも大きな声を出して痛がる。シュートブロックのあとにピッチに倒れ込み、担架が必要かと思わせてもすぐに立ち上がって平然としている。

 ささいなことと言えば、ささいなことだ。ただ、Jリーグではあまりお目にかからないそうした振る舞いの積み重ねが、ピッチ上に独特のムードを醸し出しているように見えた。馴染みのない雰囲気に横浜の選手たちは飲まれリズムを狂わされた部分があったのではないかと、画面を通じて感じられた。

 とりわけ同点とされた後は、いつもの姿ではなかったように思う。本来はボールと主導権を握り、ゲームを支配するのがスタイルのはず。リスクを恐れずパスをつなぎ、組み立てる。それをどこまでやり通せたか。劣勢になると可能性の低いクリアで難を逃れようとするプレーも見られた。リスクよりもセーフティに。間違っているとは思わないが、アタッキング・フットボールを掲げるチームの勝利へのアプローチとして正解だったのか。

「多くの選手が、このレベルでの試合を初めて経験するところはあったと思います」(ポステコグルー監督)
 
 クラブとして初のACLでの決勝トーナメント。指揮官は「完全に相手にやられた、しょうがないね、という結果ではありませんでした」と振り返る。前半の内容を見れば、たしかにそうかもしれない。だが、90分で考えるとどうだったのか。

 負ければ終わりの一発勝負のノックアウトステージで、経験不足を露呈し、"自分たちのサッカー"を貫けない。消化不良の印象を残す敗戦だった。

文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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