久保、ファティ、ペドリ、ヴィニシウス…度胸満点の若きアーティストから芸術性を奪うな【現地発】

2020年12月06日 エル・パイス紙

大人たちと堂々と渡り合いながら…

バルダーノ氏が注目の若手のひとりとして名前を挙げた久保。(C) Getty Images

 フットボールにおいて理論の体系化、戦術の高度化の流れはもはや誰にも止めることができない。

 しかしそんな中、アンス・ファティ、ペドリ(いずれもバルセロナ)、ロドリゴ、ヴィニシウス・ジュニオール(いずれもレアル・マドリー)、久保建英(ビジャレアル)、ユヌス・ムサ(バレンシア)といった若手が台頭を見せている。

 ヴィニシウスを除くといずれもまだ殻から出てきたばかりの18歳から19歳のティーンエイジャーで、当然、成熟した選手に比べて、訓練は行き届いていない。しかしそうした経験の不足をものともせずに、大人たちと堂々と渡り合いながら、独力で局面を変えるプレーを随所に披露。ファンもそんな度胸も魅力も満点の活躍に喝采を浴びせている。

 結局のところ、フットボールで重要なのは、判断力、プレーの正確性、そして決断力だ。そこにベテラン、若手の違いはない。
 
 整理された工具箱が熟練工の仕事をサポートするように、理に適った的確なコンセプトの確立はチームパフォーマンスを向上させる。とりわけグレガリオ(サイクルロードレースにおいてエースをアシストする選手のこと。縁の下の力持ち的な存在)的な選手にとっては、レベルアップするうえで大きな支えとなる。これらは知識と指導法の体系化がもたらした紛れもない重要な成果だ。

 ただ同時に問題もある。何もかも枠にはめようとし過ぎると、アーティストをグレガリオ的な選手の中に埋没させてしまう危険性をはらんでいるからだ。重要なのは頭でっかちにならないこと。せっかくの進化がフットボールから芸術性を奪ってしまってはそれこそ本末転倒だ。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳:下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。
 
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