【韓国メディアの視点】Kリーグに新風を吹き込む前鳥栖監督のユン・ジョンファン

2015年03月24日 慎武宏

蔚山現代を率いて持ち前のハードワークと堅守速攻スタイルで躍進中。

今季から蔚山現代で指揮を執るユン・ジョンファン監督。鳥栖時代と同様、ハードワークをベースにした堅守速攻スタイルは健在だ。(C) SOCCER DIGEST

「帰って来た"クェットリ(知恵蔵)"、トクスリ(鷲)に続きファンセ(コウノトリ)も打ち落とす!!」
 
 どこかの昔話に出てきそうなフレーズだが、韓国のサッカーメディアを飾った見出しだ。トクスリとはFCソウルを率いるチェ・ヨンス監督、ファンセとは浦項スティーラーズを率いるファン・ソンホン監督の愛称。そして、クェットリとは前鳥栖監督で今季から蔚山現代の監督として6年ぶりにKリーグに帰って来たユン・ジョンファン監督の現役時代のニックネームである。
 
 生粋のストライカーだったふたり(チェ・ヨンス、ファン・ソンホン)は、ゴールを「奪う」「運ぶ」という意味も込めて鳥に例えられたが、小柄で童顔なテクニシャンだったユン・ジョンファン監督は「知恵深く愛嬌がある小僧」という意味を持つ「クェットリ」と呼ばれてきた。
 
 そのクェットリがKリーグ開幕から快進撃を続けている。3月8日に開幕したKリーグで蔚山現代は、FCソウルとの開幕戦を2-0、続く浦項戦では4-2の勝利を飾って2連勝。3月21日の全南ドラゴンズ戦は0-0で引き分けたものの、勝点7でリーグ戦首位に立っている。
 
 ユン・ジョンファン監督のKリーグ復帰は、韓国でも関心を集めた。なにしろ蔚山現代の監督職は代々、名門・高麗大学出身者や大韓サッカー協会(KFA)で要職を務めてきたクラブOBが任されるポジション。元韓国代表とはいえ、東亜大学出身でクラブOBでもないユン・ジョンファン監督の登用は異例だった。
 
 しかも、Jリーグの鳥栖を率いて、昨季は一時首位にまで押し上げた監督だ。Jリーグで指導者生活をスタートさせ、確かな経験と実績を積んだ監督がKリーグでどんなサッカーを見せるか――。
 
「異例人事」と「Jリーグ帰り」というキーワードが重なって、期待と注目度は高かったが、FCソウルや浦項といった優勝候補を連破したこともあってメディアの評価も俄然高まってきた。
 
 鳥栖時代もハードワークを前提とした堅守速攻で結果を出してきたユン・ジョンファン監督だが、蔚山現代でもそのスタイルは健在。蔚山現代は近年、前線へのロングパスを多用するカウンタースタイルが鉄槌のように破壊力があるということから"チョルテ(鉄槌)サッカー"と呼ばれてきたが、「鉄槌サッカー、ユン・ジョンファン式でグレードアップ」と見出しを打つ記事も多い。

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