【指揮官コラム】チェンマイFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|タイで「学ぶ」ことは何もない!?

2015年03月24日 サッカーダイジェスト編集部

人生初のムエタイ体験で「感じた」もの。

人生初のムエタイ体験。キック、パンチ、ワンツー、エルボーと技を繰り出す。

 前回のコラムでお伝えした通り、タイリーグは代表戦による3週間の中断期間に突入。4月4日のリーグ再開に向けて、我がチェンマイFCもトレーニングを重ねる日々を送っている。
 
 そんなトレーニングの合間のオフに、僕は友人に誘われてムエタイのトレーニングを見学しに行くことになった。いや、見学というのは間違い。ただ見るだけのはずが、実際にリングに上がってトレーニングに参加してきたのだ。
 
 特に何かを用意していったわけではなく、練習を見ていたら、いきなり「ヤルか?」と聞かれ、僕は即座に「うん」と答えた。こんな体験はもちろん人生で初めてだ。リングに上がるだけでも大興奮で、現役時代と同様にアドレナリンが出てくる。
 
 ミットへのパンチ、キック、ワンツー、そしてエルボーと4分間を2セットこなした。
「いや~、楽しかった!」
 というのが正直な感想。人生初のムエタイ体験は僕の好奇心を大いに刺激してくれたし、単純に見るだけでなく、実際にやってみたことでムエタイという競技への興味も俄然湧いてきた。

【動画】 ムエタイ体験の様子はこちら!
 
 しかし、だからといってムエタイから何かを新しく学んだり、教わったという意識はない。僕はただただ、ミットめがけてパンチやキックを打ち込んで、ほど良い興奮を味わっただけだ。
 
 日本であれば、異文化や異なる世界の人々との出会いがあると、何かを学ばなくてはいけない、勉強しなくてはいけないと思う傾向がある。謙虚な日本人は事あるごとに「勉強させてもらいます。学ばせてもらいました」などと言うが、このタイという国は違う。何か新しい出会いや経験をした際に、「学ぶ」という姿勢ではないのだ。
 
こうした場合、「学ぶ」というよりも「感じる」がしっくりくるかもしれない。実際に僕もこのチェンマイに住んで以来、何かを「学ぶ」ことよりも「感じる」日々の方が多い。今回のムエタイ体験がまさに良い例で、"見て学ぶ"ことをしようとしたつもりが、リング上でどっぷりとその激しさや息遣いを"感じる"ことになった。
 
 日々、何かを自分で感じて生きていく――。これは「学ぶ」「教わる」という感覚が強い日本にいると、実現しにくいことなのかもしれない。

次ページ純粋に感じることは、勤勉な日本人に足りない感覚かもしれない。

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