「マジョルカ時代を思い出す」日本代表における久保建英の問題点をスペイン人戦術アナリストが指摘!「特に気になったのが室屋の…」【現地発】

2020年11月16日 アレハンドロ・アロージョ

左サイドでプレーするようになってから…

パナマ戦で先発し、72分までプレーした久保。スペイン人戦術アナリストはそのパフォーマンスをどう見たのか?(C) Getty Images

 サッカー選手の成熟度を測る物差しの一つが、そのパフォーマンスがチームによって変動しないかどうかだ。所属クラブで素晴らしいパフォーマンスを披露している選手が代表となるとパタッと活躍が止まるケースもある。当然、戦術や一緒にプレーするチームメイトが異なる中でも能力を発揮できるのが"成熟した選手"となる。

 パナマ戦に先発した日本代表での久保建英のプレーを見て思い出したのが、昨シーズンのマジョルカでの姿だ。入団当初から守備に比重を置いた戦い方をするチームで、仕掛けを見せても相手DF陣に囲まれるシーンが続いた。その孤立無援の状況は、冬の移籍市場でアレハンドロ・ポソ(現エイバル)がセビージャから加入し、右SBのレギュラーに定着するまで改善されることはなかった。

 このパルマ戦、日本代表の森保一監督は、3-4-2-1を採用。久保は2シャドーの右に入った。試合開始から、日本代表、久保とも苦戦を強いられた。後方から繋ごうという意図は感じられたが、ビルドアップがスムーズに運ばず、ルーズボールもなかなか拾えなかった。

 一つ想像していただきたい。画家がキャンバスに絵を描くときに必要不可欠なツールがイーゼルスタンド(画架)だ。下部に固定するものがないと、どんなに優れた画家であってもキャンバスが揺れて思うように絵を描くことはできない。久保の場合もどんなにプレーを想像しても、支えとなるものが不足し、ピッチというキャンパスに自在に描くことができていなかった。

【動画】スペイン人分析官も認めた久保建英の絶妙スルーパスはこちら
 特に気になったのが、右ウイングバックの室屋成のポジションだ。試合を通じて位置取りが低く、ウイングバックに求められるピッチの幅を確保する役割を果たせていなかった。おかげで久保はアタッキングサードでボールに絡もうとしても、なかなか前を向いてプレーすることができなかった。もちろん久保に数的不利の局面を打開する個の力が備わっていればいいが、現状そこまでのレベルには至ってはいない。

 徐々に状況が変わったのが、三好康児とポジションを入れ替えて左サイドでプレーするシーンが増えた20分過ぎからだった。室屋に比べて、左ウイングバックの長友佑都の位置取りは高く、その分、周囲のサポートも厚くなった。遠藤航、南野拓実との絶妙なコンビネーションで奪取したPKはそうした流れの中で久保が前を向いてプレーできたからこそ生まれたものだった。

 ポジションの入れ替えで状況が劇的に改善されたわけではないが、久保にとって一つのきっかけになったのは間違いない。ビジャレアルでもそうだが、周囲がスペースを創出し、自由にプレーできる環境を得ることができれば、久保が輝く可能性がそれだけ高くなる。

 サッカーは言うまでもなくチームスポーツだ。一線級のタレントであっても、輝きを放つには周囲のサポートも必要だ。パナマ戦を見た限りでは、日本代表のチーム作り、久保の活用法ともまだ道半ばであることを感じさせた。

文●アレハンドロ・アロージョ(戦術アナリスト)
翻訳●下村正幸

【動画】2G1A以外にも圧巻プレー連発!UEFAが公開した久保建英のELデビュー戦プレー集

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