【J1終盤戦のシナリオ|清水】ポイントは前監督の財産をどれだけ生かせるか! 若手の育成も大きなミッションに

2020年11月11日 前島芳雄

残念なのは“普通のサッカー”になってきたこと

【最新試合の布陣/26節ヴィッセル神戸戦】

 コロナ禍によりリーグ中断や降格無し、交代枠が5人に増えるなど異例のシーズンとなった2020年のJ1リーグも終盤戦に突入。各クラブの番記者にここまでの評価と残されたシーズンでの現実的な目標をアンケートした。

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清水エスパルス
今季成績(11月10日時点):17位(勝点17/4勝5分17敗)、残り8試合

【当初の目標】新しい攻撃的スタイルの基盤を作り、選手とチームに根付かせること
【今季ここまでの評価】50点/100点

【採点理由】
 昨年のJ1王者、横浜F・マリノスで参謀役を務めたピーター・クラモフスキーヘッドコーチを新監督に招き、ポステコグルー監督譲りの先鋭的な攻撃サッカーの構築を目指してスタート。だが、イージーな失点を減らすことができず、結果が伴わないなかでスタイルの追求にも徐々に妥協が見え始めた。

 シーズン当初よりも少しずつ普通のサッカーになっていったのが残念なところで、得点は最大の武器であるセットプレー頼り。勝てないだけでなく、スタイルの構築という面でも期待通りの成果が見えなかったため、第25節・柏レイソル戦終了後に3勝5分17敗という成績でクラモフスキー監督が解任された。

 ただ、前監督が積み上げた財産がまったくなかったわけではなく、パスワークやビルドアップの質、攻守の切り換えの速さなどは昨年よりも向上している。急きょ就任した平岡宏章新監督も、それを引き継ぎながら守備のポイントを整理し、初戦の第26節・ヴィッセル神戸戦では今季初の逆転勝利に導いた。
 
【注目の一戦】第27節・セレッソ大阪戦
 神戸戦は監督交代の劇薬効果で選手が躍動したが、一息ついて新体制での本格スタートとなる試合でどんな戦いを見せられるか。その後の流れも大きく左右する一戦となるだろう。

【終盤戦のベストシナリオ】
 クラモフスキー監督がここまで積み上げてきたものをどれだけ生かし、チームと選手の成長につなげられるかが今後の焦点となる。平岡監督も前監督のサッカーの良い面は継承していくことを明言しており、それをさらに伸ばして守備の修正を加えていくなかで、結果にも結びついていくという流れが作れればベストシナリオと言える。

 それができれば、選手たちの自信も増して個々の成長も加速するだろう。新型コロナウイルスの影響もあって来季の補強予算は減少することが予想されるため、今いる選手たちがどれだけ成長できるかが来季の成績にも大きく影響するはず。

 立田悠悟、西村恭史、梅田透吾、鈴木唯人など有望な若手は多く、西澤健太や中村慶太といった新たな主軸も含め、クラブの将来を担っていく選手たちの育成に力を注ぐことも、終盤戦の大きなミッションとなるだろう。

文●前島芳雄(スポーツライター)
 
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