“批判をかわす天才”バルトメウはなぜ突然バルサを去ったのか? ドタバタ辞任劇の舞台裏【現地発】

2020年11月05日 エル・パイス紙

親しみやすい風貌で、周囲を騙し…

「辞任する理由がない」と語った翌日にバルサ会長の職を辞したバルトメウ。(C) Getty Images

 バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ政権が幕を閉じた。さんざん延命を図った挙句、しかも会長自身が、「辞任する理由が見当たらない」と明言したその翌日に総辞職するというドタバタ劇だった。

 バルトメウは今夏、リオネル・メッシの意思に反して引き留めに成功したが、今度は自らの意志に反してバルセロナを去ることになった。不信任投票の実施条件となる1万6521人を上回る1万9380人の著名が集まった時点でバルトメウの命運は尽きていた。

 しかし、彼はありとあらゆる手を尽くしてその開催を遅らせようとした。票集めの際に不正があったと主張し、警察に届け出るなどの行為はもはや意味不明だった。バルトメウの真意が、財務調整を施すための時間稼ぎを目的に、予定通りに3月20日か21日に会長選挙を開催し、政権を引き渡すことにあったことは明らかだった。

 不信任投票に晒される事態から免れようと、最後にバルトメウが訴えたのは投票者の健康の問題だった。スペイン国内で新型コロナウイルスの感染が再び拡大する中、ロジスティック面で準備が整っていないというのがその言い分で、15日間の開催延期を申し入れた。

 しかし、カタルーニャ州政府がその要望を認めず万策尽きる格好となった。土壇場で辞任を表明したのは、「クラブ史上初のソシオに追い出された会長」という不名誉なレッテルを貼られるのを避けるためだった。

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 バルトメウは多くの場合において現実から目を背けてきた。2015年7月に会長選で勝利を収めて以来、ネイマールの移籍に絡む不正疑惑から、SNS会社に委託してジェラール・ピケやメッシらへの批判を煽り、今も捜査中の"バルサゲイト"に至るまで様々な事件が起こったが、彼の取った行動はことごとく原則に反するものだった。

 結局、自らの政権下で10人の理事が辞任。その結果、バルトメウに権力が集中し、昨シーズンのチャンピオンズ・リーグでバイエルン・ミュンヘンに2-8の歴史的惨敗を喫した後も陣頭指揮を執って再建に乗り出した。

 ただ元スタッフが「バルトメウは普通の人間だ。危機的な状況に直面し、呑まれてしまっている」と評するようにサンドロ・ロセイ元会長の右腕として政権に加わったバルトメウに巨大な組織をまとめる統率力はなかった。

 遅かれ早かれ退任するのではない。クラブのトップとしてこれだけ失政を繰り返してきた人物は、その責任を取って辞任すべき――。それがバルセロニスタの総意のように形成されていったのだ。

 バルトメウは親しみやすい風貌も味方に、自らを騙し、周囲を騙し、物事を曖昧にしながら批判の矛先をかわす天才だった。

 この土壇場の場面でも、その持ち前のキープ力を活かし、起死回生のゴールを挙げようと最前線で踏ん張っていたが、2015年7月に選挙で選ばれて以来、やることなすこと裏目に出ていた彼が、辞任というオウンゴールを決めたのは、必然だったのかもしれない。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。

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