【松本】“小さな巨人”セルジーニョが後半戦のキーマンだ!想定外の苦戦を強いられるチームを救えるか?

2020年10月23日 大枝 令

松本はJリーグ参入後では初めてとなるシーズン途中の監督交代

今季は10番を背負い「責任感も出てきた」というセルジーニョ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ピッチに君臨する小さな巨人――とでも言おうか。

 松本山雅FCのMFセルジーニョだ。チームは5勝11分12敗(勝点26)の20位とかつてない苦戦を強いられているが、その中でも気を吐く選手の一人だ。

 初来日して4年目の今季は志願して背番号10を背負い、副キャプテンも務める。「(チームの)状況はあまり良くないが、自分はすごくモチベーションが高い。まずは攻守にわたって自分がやるべきことをしっかりやらなければチームも勝つことができないという責任感がある」と力を込める。

 その言葉通り、ピッチ内では攻守にわたって絶大な存在感を放つ。直近の28節・大宮アルディージャ戦もそうだった。阪野豊史と2トップを組み、左サイドに流れながら杉本太郎や高橋諒らと連動してバイタルエリアを侵食。かと思えば22分には中盤まで落ちてボールをピックアップし、裏に正確なパスを流し込んで高橋のチャンスを演出した。

 守備でも献身的な姿勢が目を引く。最前線から精力的にプレスをかけて制限するだけでなく、緩急をつけた動きで奪取も図る。例えば19分、自身の持ち場を離れて一気に右サイドまで加速。身長が21センチも上の大宮DF西村慧祐を強襲し、松本ボールのFKを得た。「自分がチームを牽引する」と言わんばかりの獰猛なプレーは、攻守両面で大きな役割を果たしていると言えるだろう。
 
 さらに、プレースキッカーとしても信頼を集める。この日直接FKで枠を狙った2本は大宮GK笠原昂史に阻まれてしまったが、鮮やかに突き刺した試合もある。14節・京都サンガF.C.戦だ。1−1の77分、約40メートルもの距離から長めの助走をつけて思い切りよくシュート。これがネット左隅を射抜き、一時勝ち越しに成功した。「FKは自分の長所だし蹴るのは好き」とうなずく。

 J2に降格して1年目の今季。チームは想定以上の苦戦を強いられて下位に低迷し、Jリーグ参入後では初めてとなるシーズン途中の監督交代という苦渋の決断が下された。柴田峡編成部長が後任として指揮を執っており、セルジーニョは「戦う姿勢もゴールに対する積極性もそうだし、いろんな意味で良い方向にチームは向いている。柴田監督が自分をすごく信頼してくれていることも感じている」と一定の手応えも口にする。

 それだけに、勝点3という目に見える結果が出ないのがもどかしいのだろう。「いろいろと試行錯誤して努力しているが、なかなか勝てず悔しいし悲しい。ただ今年は言い訳じゃないけど何かがおかしい。運もないしボールが何度もバーに当たってしまう。率直な意見としてはちょっと、やるせない」と表情を曇らせるセルジーニョ。

 それでも松本を再浮上に導くため、166センチの身体をフルに躍動させながら勝利を希求する。

取材・文●大枝 令(スポーツライター)
 

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