【浦和】阿部の一撃が示した"浦和スタイル"進化への道

2015年03月15日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

まさに弾丸と化したボールをネットに突き刺す。

このままスコアレスドローかと思われた83分、阿部(右)が強烈なミドルシュートを突き刺した。 写真:徳原隆元

「思いっ切り、打ってやりました!」
 
 試合後のヒーローインタビューで、阿部はそのように力強く言ってゴールシーンを振り返った。
 
【J1 PHOTOハイライト】1stステージ・2節

 浦和が主導権を握るものの、5バックと3ボランチの計8人でゴール前を固める山形の守備を攻略できない、もどかしい展開が続いた。ペトロヴィッチ監督は後半に入り、高木、武藤、関根と攻撃的なカードを立て続けに切り、前線に人数をかけて1点をもぎ取りにいく。
 
 そして83分、右サイドから攻撃参加した森脇のクロスに対し、ゴール前で武藤が相手DFと競り合う。そのこぼれたボールに飛び込んだのが、阿部だった。
 
「ボールのバウンドと打つタイミングが合った。ちょうどコースも見えた」
 
 ゴールまで20㍍以上ある地点から右足を振り抜くと、押さえのきいたボールがまさに弾丸と化してネットに突き刺さる。それまで浦和の前に再三立ちはだかってきたGK山岸の築く壁を、打ち砕いてみせたのだ。

 浦和のユニホームを着ることの誇りと覚悟、ペトロヴィッチ監督の下で4年連続キャプテンを務めてきた責任感と使命、そしてサポーターとの約束……様々な気持ちが込められた魂の一撃だった。

 本人も喜びを爆発させ、スタンドを埋めた大勢のサポーターとともに咆哮を轟かす。真っ赤な歓喜の輪の中心に、キャプテンマークをつけた阿部がいる――。2015年のホーム開幕戦、実に絵になる光景がピッチ上に広がっていた。
 
 阿部は頷く。
 
「ホームでしばらく勝っていなかったので(編集部・注/リーグ戦の勝利は昨年10月5日・27節の徳島戦まで遡る)、なんとか結果を残したかった」
 
 ACLのブリスベン戦に敗れた後、ゴール裏のサポーターの傍まで行って人差し指を掲げて、「まず、ひとつ勝つ。そこから。だから一緒に戦おう」と訴えた。その約束を果たすように、リーグ開幕の湘南戦、そして今回のホーム開幕となった山形戦でも、"ひとつ目の勝利"をサポーターにプレゼントした。

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