熱くぶつかり合った一戦。技術、戦術に隔たりがなくとも川崎とC大阪を分けた差

2020年10月05日 江藤高志

「負けないですよ」守田の言葉にも力強さが

試合終盤にL・ダミアンのゴールで勝ち越した川崎。大一番を力強く制した。写真●金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ20節]C大阪1-3川崎/10月3日(土)/ヤンマー

 2位のC大阪との直接対決を3−1で制す。首位の川崎が大一番をモノにできた勝因のひとつに挙げたいのが「メンタル」の重要性だ。この点については、試合後の会見で川崎の鬼木達監督はこう言及している。

「選手が立ち上がりからアグレッシブに戦ってくれたこと。そして、いい形で先制できましたが、追いつかれた後も焦れることなく、我慢強く戦って、しっかり勝利に結びつけてくれた。本当にメンタルの勝利だと思っています」

 もちろん、選手個々の技術や戦術理解度の高さがあってこそ、強いメンタルを維持できるのだろうが、目の前の1戦に照準を合わせるチームマネジメント術と、強気な姿勢が川崎を勝利を導いた。

 そもそも川崎にとってアウェー長居は鬼門だった。鬼木監督就任初年度の2017年から昨季までは、3季連続で2失点し3連敗。その長居での2位のC大阪との試合を前に鬼木監督は「決勝戦のつもりで戦わなくてはいけないゲームだと思います」とコメント。また「全力でぶつかるというのは自分たちが今までやってきたこと。 そういう姿勢をしっかり出さないといけないゲームかなと思っています」と述べていた。

 そうした指揮官の想いを選手たちも各々で受け止め、自らの言葉にしていた。そのひとりが守田英正だった。

「この1戦を34分の1みたいな形で捉えてない」と話す守田は、過去の長居での対戦成績の悪さについて質問され「負けないですよ。全然嫌なイメージもないですし。負けないと思います」と語っていた。どんなに強いチームであっても、わずかながらでも負けることがあり得るのがサッカーだ。それでも「負けないですよ」と口にする守田からは確固たる自信が伝わってきた。
 その守田と同様に「34分の1といいますが、自分はそうは思わないですし、特別な試合になると思います」と話していた小林悠は「強い相手というのは確実ですし、難しい試合になるのは間違いないです。でも自分たちのプレーをしっかり出して、自信を持ってやれば結果はついてくると信じてます」と話していた。

 そんな川崎を迎え撃ったC大阪は、川崎のストロングポイントを抑えるべく、前線にロングボールを蹴り込むなど、狙いを持って試合を進めた。前半のオウンゴールによる失点を跳ね返し、一時は同点に追いつく勝負強さも見せた。選手たちを後押ししようと、クラブもホームのメリットを活かすべく、場面に応じて声援の再生をコントロール。場内放送を上手くオンオフして、勝負どころでC大阪サポーターのみのスタジアムを盛り上げた。

 逆転できそうな空気感が作れていたからこそ、ロティーナ監督は試合を決める終盤の2失点目を悔やんだ。

「良い攻撃、落ち着いて自分たちのプレーができ、同点に追いつき、拮抗した展開にできましたが、2失点目が痛かったです」

 ロティーナ監督の悔しさは、勝ち越されたことに対してではなく、失点で選手たちが気落ちしてしまったことに対してのものだったと考える。
 
 レアンドロ・ダミアンに勝ち越し弾を奪われた直後、C大阪ボールで再開した試合は、プレゼントパスにより川崎ボールに。このチャンスに川崎の選手たちが一気にゴール前に殺到。三笘薫の得点に結びつけた。この間わずかに1分だった。

 常に強気で戦った川崎がC大阪を押し切り、ダメ押し点が決まった。技術、戦術に差がない両者の対戦は、最後まで強いメンタルを貫いた川崎の勝利で終幕したのだ。

取材・文●江藤高志(川崎フットボールアディクト)

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