【三浦泰年の情熱地泰】ノーベル賞博士もリスペクトしてくれたカズのプレーに、勝敗とは違う戦いを見た

2020年09月25日 サッカーダイジェストWeb編集部

川崎戦が行なわれた日、僕は山梨県の韮崎市と北杜市にいた

J1最年長出場を更新したカズ。ピッチでは淀みない判断で攻撃の起点となるシーンも見られた。写真:田中研治

 弟・カズがついに、新型コロナウイルス感染症拡大により日程がズレた2020年シーズンに登場した。

 兄としてはもちろんサッカー人としても素直に嬉しい。

 もちろん出場だけでは、騒ぐことはないと言う人は居るかもしれないし、カズ本人もチームの勝ちに貢献するということを考えれば、この日だけで満足はしていないと思うが、僕は正直に嬉しい日であった。

 53歳のカズがJ1リーグで普通にプレーするのは奇跡的なことだ。努力の賜物であると思う。

 誰に聞けば分かるか? 50代以上の男性に聞けば口を揃えて言うであろう。奇跡だと。

 ルヴァンカップは出場していたが、今シーズンのリーグ戦出場はなく、コロナ禍による自粛期間中は、練習も外出さえも自由が利かなかったことを考えると、カズがどんな生活をし、どんな摂生、努力をしてきたか。

 そして、そのコロナウイルスとの戦いが続くなかで、シーズンもまだ続くのである。

 普通の人がコロナウイルス感染の危険性が叫ばれているなかで暮らすだけでも大変な中で、サッカーをしながら、トレーニングもしながら、どれだけの準備をしてきたか? どんなストレスを持っていたかは想像もつかない。

 そして、今回の出場に関して、カズの登場に期待している人がどれだけいたのだろうか。本当に凄い数のサッカーファンが待ち望んでいたであろう。

 そしてカズはそのプレッシャーを感じながら出場を信じて準備してきたのだと察しがつく。これは全ての選手がそうであるが、53歳という年齢を考えれば奇跡的なことであり、それがまた続くのだと思う。

 そして、その時間を作ってくれた全ての周りの人たちへ感謝の気持ち「ありがとうございます」と伝えたい。

 僕はこの日、仕事とプライベートで山梨県の韮崎市と北杜市にいた。

 韮崎市ではノーベル賞受賞者の大村智博士にお会いできる機会があった。大村博士も韮崎高校サッカー部を応援していることもあり、カズの話にもなった。

 その頃、おそらくカズは試合前の気持ちを整えている時だったであろう。

 大村博士も53歳でボールを蹴り、プレーし続けるカズを素晴らしいと尊重してくれた。

 僕自身、今まで生きてきてノーベル賞を受賞した人とお会いしたのは初めてだ。同じ山梨県の人たちでも会えるか分からない人との出会いに感謝の気持ちでいっぱいであり、僕自身のモチベーションにもなった。

 その後、韮崎市から隣に移動し、北杜市にある北杜高校のサッカー部員に、講演と指導を約3時間行ない、サッカーの育成にも関わった。ソーシャルディスタンスを取り、しっかりと感染対策を行なったなかで実施した。

 講演の中では、カズの存在の話もさせてもらった。

 彼らの目標に一歩でも近づけるためのヒント、きっかけになればと思うし、将来、サッカー選手にならなくても立派な大人に成長してくれればと思う気持ちで、彼らとの時間を僕自身も楽しませてもらった。
 

次ページ三浦兄弟のサッカーへの想いは永遠に、闘いはまだまだ続くと思う。

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