コロナ後も『5人交代制』は継続すべき? 一度“禁断の果実”を味わったら元には…

2020年09月26日 後藤健生

試合は従来よりもずっと面白くなったが…

5人交代が可能になり、戦術変更の幅は大きく広がった。現時点でそれが試合の魅力を引き立てている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 国際サッカー評議会(IFAB)は、1試合の交代枠を3人から5人に増やす、パンデミック下における一時的な規則改正を今季も適用可能とすると発表している。「5人交代制」には賛否両論あるようだが、今季だけでなく、それ以降も継続し、これをスタンダードとすべきなのか。サッカージャーナリストの後藤健生氏に検証してもらった。(※『サッカーダイジェスト8月27日号(同12日発売)』より転載)

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 新型コロナウイルスの感染拡大によって中断していた各国リーグ。その再開後の過密日程を乗り切るために暫定採用されたのが、「5人交代制」だった。
 
 本来なら、来季以降は3人交代制に戻すべきだ。しかし、一度でも5人交代制を経験してしまったら、誰でも3人の交代では物足りなくなってしまうはずだ。5人交代制は、いわば"禁断の果実"だったのだ。
 
 選手交代はローテーションのためでもあるが、これを駆使することで戦術変更の幅も大きく広がった。
 
 取材者としては、5人交代制になってからメモを取るのが非常に忙しくなった印象だ。同時に複数のカードが切られてシステムが変化すると、それを図にして書き留める。さらに相手チームが新しい選手を投入してこれに対応すると、再びシステムを見極めてメモを取る…。
 
 疲労を考慮した単なる選手の入れ替えだけでなく、戦術的な交代も多いから、それでメモを取るのが忙しくなったわけだが、同時に試合は従来よりもずっと面白くなった。
 
 例えば、FC東京が横浜F・マリノスに3-1で快勝した4節の試合。FC東京は前線に俊足の永井謙佑、田川亨介、ディエゴ・オリヴェイラを並べて横浜陣内の大きなスペースを利用しようとした。ただ、故障明けの永井は最初から後半に交代させるプランだったはずだ。ところが、PKを獲得した場面で田川が負傷して、早くも17分に交代を余儀なくされてしまう。
 
 3人交代制だったら、長谷川健太監督のプランは狂っていたかもしれない。だが、今は5人の交代ができるのだ。慌てる必要はない。後半、予定通りに永井を下げるなど着実に交代を重ね、最後はD・オリヴェイラに代えてDFのジョアン・オマリを投入するなどリードを守り切った。「5人交代制」があったからこその完勝劇だった。
 
 J2では徳島ヴォルティスに3点をリードされた愛媛FCが、ハーフタイムの3枚替えで流れを変え、大逆転した2節の試合が話題になった。
 
 この試合では得点のほとんどがセットプレーからだったが、同様の展開となったJ3のY.S.C.C.横浜対カターレ富山戦(2節)では、流れの中から多くの点が生まれ、5人交代制の効果がより強く感じられた。
 
 YS横浜に3点をリードされた富山は、前半に1人、ハーフタイムに2人を交代し、システムも4-2-3-1から3-4-3に変更。するとリズムが一変し、後半に4点を奪って大逆転に成功したのだった。
 

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