【湘南×浦和│勝負の綾】「あえてボールを持たせた」浦和の狙いは?

2015年03月08日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

より具体的に、この日の「湘南対策」を立てていた。

菊地からボールを奪う青木(手前)。徐々に球際でも強さを発揮した浦和が、後半相手を圧倒した。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 ようやく公式戦で今季初勝利を挙げたものの、試合後の記者会見に臨んだ浦和のペトロヴィッチ監督に、笑顔はなかった。

「前半と比べ、後半はガラリと内容が良くなった。その要因は?」と質問を受けると、「後半のほうが良かったと言ってくれるのは嬉しい。ただ私から見れば、前半も後半も決して良くはなかった」と返答。不満そうだった。

「運動量とハードワークで知られる湘南が、前半は明らかにその点で私たちを上回っていた。湘南がJ1でどれだけ旋風を巻き起こせるのか。浦和に対してどれだけやれるのか。そういった点が、この試合で注目されていたことは知っている。しかし、現実的に見たら湘南は、(J1に)残留できればいいというチームだと思う。結果的に、浦和と湘南のチームの違いを見せられた試合だった」

 もちろん勝利を収められて嬉しい。ただ、妥当な結果だったと言うのだ。

 いろいろな見方のできた試合だったと思う。

 浦和が気迫と底力を見せた。湘南が後半にミスを連発し、それが失点に直結した。運動量が武器の湘南が前半から飛ばして失速し、タレント力で勝る浦和が後半に凌駕した。交代選手が浦和は機能し、湘南は上手くいかなかった……。
 
 ポイントは確かに、ペトロヴィッチ監督も挙げた「運動量」にあった。

 ハードワークが武器の湘南に対し、後半の浦和は明らかに動きの質も量も上回った。そこに浦和の個の能力の高さが加わって、湘南にチャンスらしいチャンスを作らせなかった。"本家・考えて走るサッカー"の面目躍如と言えた。

 とりわけ3-4-2-1の布陣同士の対戦で鍵を握ったのが、サイドの攻防だ。

 4トップや5トップの状況を作り出すためにも、ウイングバック(WB)がより攻撃に顔を出せたチームのほうが主導権を握れる。

 そんななか、浦和の左WBとして先発した宇賀神は1得点・1アシストなど、全3得点に絡む活躍を披露。他の選手よりパワーの大きなエンジンを積んでいるかのように、馬力の差を見せつけた。

「(橋本)ワタルくんが加わって、WBの選手層が厚くなったが、自分も負けられない。切磋琢磨しながら、お互いを高め合っていきたい」(宇賀神)と、チーム内の激しいポジション争いを、この日の活躍のひとつの要因に挙げた。

 また、勝負の綾になったのが、スカウティング(対策)だった。

次ページ3-4-2-1同士だったからこそ際立った浦和の個の能力の高さ。

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