18歳未満の国際移籍は原則禁止…久保建英と同じ道は歩めない中で「第二の久保」を日本で育むには?

2020年09月17日 加部 究

18歳未満の選手の国際移籍を禁じる規定は一層厳格化されている現状で…

10歳から13歳までをバルセロナのカンテラ(育成組織)で過ごした久保は今シーズンからビジャレアルでプレー。(C) Getty Images

 久保建英は10歳からバルセロナのカンテラに所属し、13歳で帰国した後はFC東京で常に飛び級で活躍。18歳になるとレアル・マドリーとの契約を果たした。過去にも少年期から欧州のクラブに所属し評価された日本人選手は存在したが、これほど順調にトップレベルまで上り詰めたケースはなかった。久保のプレーは既に小学校低学年の頃から突出しており、さらに自身の聡明さと最高の環境が成長を後押ししたわけだ。

 だがFIFAは18歳未満の選手の国際移籍を原則として禁じる規定を一層厳格化している。もはや日本の子供たちが久保と同じ道を歩むことは出来ない。これからも久保と同じレベルでプレーする少年は現われてくるかもしれない。しかし日本の現場状況は欧州とは大きな落差があり、最大限の開花を促すなら育成年代の環境整備、とりわけ指導者の質の向上が急務だ。少子化が進みサッカー人口の減少が危惧される状況を踏まえても、揺るぎない専門知識と国際レベルの見識を持つ指導者が個々としっかり向き合う環境を整えなければ、この先世界はどんどん遠退いていく。

 確かに日本にも向上心や独特のアイデアを持つ優れた指導者は点在する。だが若年層の選手たちの声を拾う限り、そういう指導者に巡り合える確率は極めて小さい。とりわけ学校単位での活動が軸となる日本では、小中高とチームが変わる可能性が高いので、6-3-3制の計12年間で一度も旧態依然とした指導に遭遇せずに済むには、早くからJクラブ入りしない限り宝くじでも当てるほどの大きな幸運が必要だ。

 国際的見地に立てば、日本を筆頭に東アジアのスポーツに対する意識は完全に異質だ。それでもサッカー界は1960年にドイツからデットマール・クラマー氏を招聘し、他競技に先駆けて指導者養成コースも確立したので、早くから国際基準に足並みを揃えていても不思議はなかった。しかし教員指導下の部活が学校の人気を背負う構図は根強く、責務を担った監督たちは強引に教育とリンクさせながら大量の部員たちを理不尽で過度なトレーニングへと導いて来た。残念ながらこの傾向は若い指導者や選手たちへも引き継がれており、JFAは暴走に歯止めをかける術がなく、眉根を寄せながらも傍観している。
 

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