【札幌】「ボロボロになるまでサッカーがしたい!」と決意を固めた稲本が初のJ2に挑む

2015年03月06日 斉藤宏則

「契約が終わるタイミングというのは、多少なりとも不安な気持ち」

キャンプではトレーニングマッチで古巣の川崎と対戦。3バックのリベロとして存在感を放った。(C) SOCCER DIGEST

「長いとは聞いていましたけど、本当に長いですね(笑)。でも、みんなでうまく気分転換をしながらリフレッシュをして、一体感を高めることでキャンプの長さをプラス要素に変えていきたい」
 
 1月下旬に沖縄県内で始まり2日間のオフを取った直後、今度は熊本県内に場所を移して継続されてきた札幌のキャンプ。ご存知のとおり、札幌がホームタウンとする北海道は冬期間に積雪があり、開幕直前あるいは開幕直後までの長期キャンプが恒例となっている。
 
 体力的な疲労はもちろんのこと、長期にわたる集団生活を強いられれば、精神的なストレス、疲労もまた生まれてしまう。そうした状況をいかに前向きに乗り越えられるかが、開幕後のパフォーマンスを左右するひとつのポイントと言えるのだ。
 
 そんな過酷なキャンプに初めて挑んだ35歳。稲本潤一。
 
 言わずと知れた黄金世代と称される79年組のひとりで、ワールドカップ出場3回。欧州カップ戦で日本人初となるハットトリックも記録。世界のトップクラブのひとつであるアーセナルにも在籍し、2006年にはガラタサライでチャンピオンズ・リーグに出場して得点も記録した。まさに日本サッカー界のビッグネームが今季から札幌に加入し、自身初となる2部リーグでの戦いに挑むことになる。
 
 札幌移籍の始まりは、戦友・小野伸二からの電話だったという。
「川崎を退団することが報じられて、すぐに伸二が電話をくれたんです。最初は『気を遣って電話をくれたんだな……』と思ったら、札幌が僕に興味を持ってくれているという話でした」
 
 そして、その時の心境は「率直に、ホッとした」(稲本)。
 
「またサッカーが続けられる。そう正直に思いました。やはり僕らプロサッカー選手というのは契約社会に生きているわけで、その契約が終わるタイミングというのはやはり、多少なりとも不安な気持ちが生まれてくる。その時に、一番最初に声をかけてくれた札幌の印象は、どうしても強くなりますよね」
 
 稲本ほどのキャリアを持つ選手でも、契約満了のタイミングというのは心が落ち着かないという。改めて、この世界の厳しさを再確認させられる一言だった。

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