【山形】「モンテ愛」に溢れるサポーターの除雪作業

2015年03月05日 頼野亜唯子

せっかくの休日にマイスコップを携えて…。

アウェーゴール裏。作業前はこのように雪に覆われていた。 写真:頼野亜唯子

 モンテディオ山形のホームスタジアム「NDソフトスタジアム山形」(以下NDスタ)に、今年も雪かきの季節がやってきた。
 
 J1に昇格した今季は、3月18日のナビスコカップ・清水戦がホーム開幕戦。その日に向けて、スタジアムに降り積もったひと冬ぶんの雪をなんとかしなければならない。そこで、山形ではもはや恒例となったサポーターに協力を仰いでの除雪作業が、2月28日と3月1日の2日間に渡って行なわれた。
 
 NDスタは、山形市に隣接する天童市にある。夏は猛暑、冬は厳寒の盆地だが、山沿いに豪雪地を抱える山形県の中では比較的雪の少ない地域だ。
 
 それでも、11月中旬には初雪が降り、気象庁のデータによれば、この地域の平年の降雪量は12月で77センチ、1月、2月は100センチを悠に超える。冬の間、雪が降るたびにいちいち除雪をするはずもなく、Jリーグ開幕前のNDスタはたっぷりと雪を溜め込んでいるというのだ。
 
 ところで、「スタジアムの除雪」と聞くと、知らない人はまずフィールド部分の雪かきを思い浮かべるのではないか。しかしNDスタの場合、ピッチは専門業者によって除雪機を使って行なわれる。
 
 この日、昨年の最終節以来久しぶりに足を踏み入れたNDスタは、すでにピッチとその周囲のトラックの除雪を終えていた。では、せっかくの休日にマイスコップを携えてスタジアムに集まってきたサポーターたちに課せられた使命とはなにか。
 
 それは、除雪機に頼れないスタンドの除雪である。白い斜面と化したスタンドから雪を取り除き、通路や座席を発掘する。どうしても、人の手でなければできない作業なのだ。
 
 10時から始まる午前中の除雪作業に集まったサポーターは170人。初日の参加者が多いのは例年のことだが、ここまで多いのは珍しい。これもJ1に復帰した今季への期待の表われか。髙橋節社長以下10名ほどのクラブスタッフを加え、固く重たい雪に立ち向かう。
 
 集まったサポーターたちは手馴れたもので、スタッフの指示を受けるまでもない。メインスタンドの上部から最下段まで、10枚ほどの波板を特製のU字金具でつないで滑り台を作ると、あとはひたすら雪をすくっては波板の上へ。
 
 雪は面白いようにスタンドの下へ滑り落ちて行く。要所要所にいつのまにかリーダーが存在していて、不具合があれば作業を止め、修正を施しては再開の合図をする。
 
 スピーカーからFMラジオの音楽が流れる中、作業は黙々と、淡々と進んだ。人海戦術とはよく言ったもので、広いスタンドに散らばった人々の手によって、真っ白な斜面がみるみるうちに見慣れた座席の風景に変わっていく様は壮観だった。
 
「午前の作業は終了です! 皆さん、お疲れ様でした!」
 
 作業開始から2時間、クラブスタッフである疋田司さんの声が響く。入社1年、今年の「雪かき隊長」である。
 
「サポーターの皆さんのほうがノウハウを持っていて、こちらがなにも言わなくても動いてくれる。その力は絶大です。午前中にメインスタンドの半分くらいまで終わればと予想していたのですが、はるかに早く進んでいます」
 

次ページ他クラブには真似できない一大セレモニー。

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