【三浦泰年の情熱地泰】政治もサッカーもやはり「心技体」が大事。とりわけ身体が健康でなければ…

2020年08月31日 サッカーダイジェストWeb編集部

安倍総理が辞任して想うこと

28日に辞意を表明した安倍総理。(C) Getty Images

 歴史が動いた。

 長期政権だった安倍晋三内閣総理大臣が任期途中で辞任した。

「悔いはないですか?」という記者の言葉に無言で通り過ぎて行った。僕は悪い癖で、何でも「サッカー界」だったらと置き換えて考えてしまう。

 それはもちろん、ずっとサッカーに携わって生きてた人間なのだから、政治家の気持ちが分かっているわけではない。

 政治は語れないし、政治の話は出来ないが、仮に僕がこの件で立場が選手だったら、「悔いはありませんか?」の問いにはこう応えるだろう。

「ないわけないだろう!!」

 これはきっと任期までやり通したとしても「悔い」とは残る物だと思う。

 欲深いと言われてしまうかもしれないが、僕がカズの年齢まで現役をやったとしても悔いのない現役生活にはならなかったと思う。

 実際に僕の現役生活は「悔い」ばかりである。

 プレーヤーが悔いなく引退できるのか?! 誰もがもっと出来る、出来ただろうという中で決断し、何処かで納得して辞めることを選ぶ。

 鹿島アントラーズの内田選手がシーズン途中で引退を決意した。

 彼と安倍総理とは違うが、記者にスタジアムを出る途中に「悔いはありませんか?」と聞かれたら? 彼はクールに最高の笑顔でどう応えるのであろう……? 聞いてみたいものだ。

 立場を選手ではなく、監督にたとえたら――。成績が出ない、結果を出せない責任をどう取るか? 勝利するまで契約期間を全うするのか。結果への責任を、シーズン途中でも「辞任」という形で取るか?

 これも難しい問題だと思う。総理大臣にもなればプロと同じだ。もらう給料も立場も普通の人とは違うであろうし注目度、責任の重さも違う。

 もちろん安倍総理の場合は、体調を崩してしまったということもある。詳細な辞任の経緯は分からないが、結果的に任期の満了が来る前に、「辞任」という形で身を引くこととなった。

 決断を加速させる要因には体調もあるが、監督の立場であれば「メンタル」が落ち、勝たせることが出来ない。自信を失ったということであろう。

 チームを建て直すには自分が退くしかないということになるのだ。勝たせる日が来る、トンネルは必ず抜けるという気持ちが持てないのであれば続けてはいけない。

 しかし、だからと言って何もやらなかったわけではない。

 総理大臣であれば日本のために、監督であればチーム(クラブ)のために、人生の全てを懸けて、自分のできる限りの能力を使ったであろう。

 ただその後、続けていたらどうなったかを見てみたいという気持ち。プロサッカーは辞任より解任が多い世界ではあるが、もし続けていたらどうなるか? そう思うことは多い。

 スポーツに政治を混在(ごっちゃに)させてはいけないという。

 だから別世界なのだろうが、安倍総理がこの苦しい状況から、サッカーで言えば監督がどのようにチームを、政治で言えばどう日本国を建て直し、勝利を導き出そうとしたのか。それを見てみたかったという思いはある。

 日本だけでなく世界全体を脅かすコロナウイルスという危機的状態から、どんな勝利を掴み取るのか。タラレバになってしまうが「安倍采配はここからが腕の見せ所!」とスポーツの世界なら言いたい所である。

 やはりサッカーと政治は大きく違うとも感じてしまうのは正直な所だ。
 

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