選手に寄り添い、鼓舞できる“感覚”の持ち主。内田篤人にはぜひ指導者への道を歩んでほしい【ドイツ発】

2020年08月26日 中野吉之伴

現役時代から「指導者目線」を兼ね備えていた

惜しまれつつも引退を発表した内田。第2の人生にも注目が集まる。シャルケには2010年から17年まで在籍した。 (C)Getty Images

 惜しまれつつも現役を引退した内田篤人。セカンドキャリアは、個人的にはぜひ、指導者になってもらいたい。

 チャンピオンズ・リーグ(CL)のベスト4進出に貢献するなど選手時代の経験が素晴らしいのに加え、シャルケ時代から指導者的視点で話をすることが多々あったからだ。

「俺が監督だったら、どうするかなと思って」

 彼はそういう視点で試合の準備をしたり、分析をしたりしていた。例えば10-11シーズンのCL準々決勝のインテル戦。この試合で、サミュエル・エトーが左サイドに張って内田の陣取る右サイドから揺さぶりをかけようとしていた。

 試合後、「あんなにはっきりやってくるとはね」と言いながらも、「(自分が)レオナルド監督だったら…。イタリアでかなり点をとっているよね、エトーさんは。だから、伸び伸びやらせて、(ヴェスレイ・)スナイデルさんにうまくつないで。そしてエトーさんが点をとるには右利きだから、左サイドにいて…というのは俺が監督だったらしていたと思う」と振り返っていた。

 試合を客観的に分析する能力は、現役時代から非常に長けていた。戦術的に分析し、「パスの出しどころを作るにはどうしたらいいか。どうすればもっと決定機を作り出すことができるのか。相手を揺さぶるためにはどんな罠をはればいいのか」というのを明確に説明する。一方で、「戦えないとだめ。根性のところが大事」とシンプルにメンタルや心構えを強調するところの、線引きもできる。

 ドイツ語で、指導者に欠かせない能力として「フィンガーシュピッツゲフュール」、直訳で「指先の感覚」とされるものが良くあげられる。ある程度は直感的で、選手の気持ちに寄り添った采配を適切にできるかどうか。論理的な正しさがすべてではなく、選手が悩むことなくプレーするための措置や、声掛けができるかは、非常に重要なポイントとなる。そのあたりのさじ加減が、内田はとても優れているのではないだろうか。

 ウニオン・ベルリン時代にも、そう感じることがあった。移籍後に内田が先発した試合でのことだ。

「多分、次ベンチだね。戻すと思う。俺が監督なら戻す、普通に。勝ててないし。出たいけどね、そりゃ俺も」

 長い間出場機会がなく、ようやく試合にスタメン出場したなら、選手の心情としては、何としてもそのポジションを守りたいと思うだろう。だが、絶対にレギュラーで出たい思いは抱えつつも、必ずそうではない視点でも自分の現状を捉え、分析していたのだ。

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