破竹の8連勝で2位!今季J2復帰初年度の北九州、強さの源泉はどこにある?

2020年08月25日 上田真之介

常勝軍団を作るヒーローに頼らない高強度サッカー

今季8得点を挙げるディサロ燦シルヴァーノ。この8連勝の間に7発の量産ぶりだ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 破竹の8連勝だ。3年間のJ3修行を経てJ2に復帰した"昇格組"のギラヴァンツ北九州が、連戦連勝で自動昇格圏内の2位につけている。8月23日の東京ヴェルディ戦ではオウンゴールで失点したものの、すぐに町野修斗のゴールで追いつき、後半にも町野が逆転弾をたたき込んだ。

「5連勝で5勝できたことも素晴らしいが、中2日の試合では8人を入れ替えてチャレンジし、結果を出してくれた。それが今に続いている」

 小林伸二監督は総力戦での奮闘に自信を深める。複数得点も8戦連続で、総得点の25はリーグ最多。昨季から標榜している攻撃的なサッカーを結果で示している。

 強さの源泉はどこにあるのか。ひとつは飛び抜けた逸材に頼らない、文字通りのチームワークだ。

 確かにFWのディサロ燦シルヴァーノは得点力が高く、ボールを動かす髙橋大悟や加藤弘堅の質は高い。永井堅梧のファインセーブもチームを救っている。しかし、スタメンを大きく入れ替えた11節・ツエーゲン金沢戦(〇2-1)でも主導権を握って勝ち切るなど戦術が浸透。FWのゴールには、必ずと言っていいほど相手の守備を乱す味方の献身的なランニングがある。ヒーローは一人には絞れない。

 落ち着いたゲームコントロールと鋭い縦パスで緩急を付けるボランチの加藤は、「相手をしっかり見て動かすという考えをチームとして持ってやっている。ミスが起きれば全員で切り替える。チームの約束があり、怖さは全くない」と話す。一人の強さに頼らず、チームで戦うという意識がベテランの言葉からも滲み出る。

 もう一つ重要な要素はフィジカルの強さがもたらすプレーの強度だ。5連戦の最終日も運動量で勝り、球際での勝負でも上回った。前線からのチェックが徹底されているほか、両サイドバックもボールを奪うための守備に奮闘する。

 小林監督は「いかにプレー強度を上げるかは去年からやってきた」と話し、高強度のサッカーを北九州の要点に挙げる。東京V戦も選手交代は戦術を動かすためではなく、強度が落ちたポジションの入れ替えを優先。5人の交代枠を効果的に使い最後まで戦い抜いた。

 連戦翌日の8月24日に還暦を迎えた小林監督。もちろん、60歳になっても一人のヒーローに頼らない全員参加型のスタイルを築き、現代的な高強度のサッカーを貫く考えに変わりはない。

「これに満足して点が取れなくなるというのも経験している。嬉しいことだが、緩めることなく、満足することなく、前を向いてチャレンジしていきたい」

 ミクスタという立派なハコに見合うカテゴリーは、もう一つ上かもしれない。ただ、チャレンジせずして成し遂げられるものではない。北九州は地に足を着け、あくまでもチャレンジャーとして全員で戦い続ける。

取材・文●上田真之介(フリーライター)

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