【浦和】やはり頼もしい男である。33歳、槙野智章は「まだ死んどらんぞ」

2020年08月16日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

先発した3試合は2勝1分と無敗

広島戦では身体を張ってゴールを守った槙野。健在ぶりを示した。(C)SOCCER DIGEST

[J1第10節]浦和1-0広島/8月15日/埼玉

 シュート数は3対20と、圧倒的な差がついた。

 それでも浦和レッズはチャンスの数で劣りながらも、サンフレッチェ広島の猛攻を粘り強い守備で退け、勝利を収めてみせた。

 勝利の立役者となったのは、スーパーセーブを連発したGK西川周作だったが、もうひとり最終ラインには奮闘した男がいる。CBの槙野智章である。

 槙野は終始コーチングの声を張り、最終ラインを統率した。疲弊するチームメイトを鼓舞し続け、競り合いとなれば激しく身体を投げ出してブロックに入った。

 押し込まれる展開でもチームが集中を切らさず、強固な守備組織を構築できたのは、この闘志溢れるDFがいたからだ。改めて、その価値を示したと言っていい。

 元日本代表でもあり昨季まではクラブで不動のレギュラーだった槙野だったが、この広島戦が今季3試合目の先発だった。

 2月の湘南ベルマーレとの開幕戦では後半アディショナルタイムの出場にとどまり、7月の再開後も5試合出場はなし。しかもその5試合のうち4試合はベンチ外だった。
 
 ようやく今季初先発したのは、7節の横浜FC戦。しかし、その試合で槙野は持ち前の明るさでチームを盛り立て、身体を張ってゴールを死守。チームを3試合ぶりの勝利に導いてみせるのだ。

「(ベンチ外が続いたのは)プロ生活でも初めての状況だったので、悔しさもありました。ただ自分のやるべきことが整理された。それが今日出せたと思う。ベテランの意地ですね(笑)」

 横浜FC戦を終えて、槙野はそう振り返っていた。

 続く清水エスパルス戦では完封はできなかったものの、テンポの良いパスワークに食らいつき、相手の侵入を押さえていた槙野のプレーは好印象だった。

 やはりこの男は頼もしいーー。ピッチに立てば、改めてそんな存在感を抱かせる。GKの西川は、とある取材中に、ふとこんなことを言っていた。

「メンタルが強くて、経験があって、それをチームに還元してくれる。彼のような選手が真ん中のラインにいるのは、GKとしても心強いです」

 ベンチ外が続いた時期には、にわかに負傷疑惑さえ流れた。ところが槙野はSNSを通じて「俺は怪我なんかしとらんぞ! むしろ元気じゃ! 槙野はまだ死んどらんぞ! くたばってたまるか」と一蹴し、そんな状況をエネルギーに変えた。

 ここまで先発した3試合は2勝1分と無敗。健在ぶりを示す33歳のDFは、まだ死んでいない。槙野の逆襲はここから始まる。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

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