「過密日程の難しさを感じている」と漏らした指揮官。王者撃破の大分、連敗脱出のカギは何だったのか?

2020年08月16日 柚野真也

大幅な戦術変更ではなく、継続を求めた片野坂監督

5連敗のトンネルから抜け出した大分。ここから逆襲なるか。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J1リーグ10節]大分1-0横浜/8月15日(土)/昭和電ド

 リーグ再開後は出だしの3戦こそ健闘を見せたが、その後は5節・G大阪戦を皮切りに5連敗を喫するなど苦しい試合が続いた。内容も悪く5試合で4得点・15失点。片野坂体制での5シーズンでは、最悪の結果が続いていた。その理由はもちろん複合的なものだが、そのひとつには準備不足が挙げられる。

 対戦相手によって緻密な戦術を落とし込み、組織で高い強度と質を誇る格上と争ってきたチームにとって、準備期間が確保できないことは致命的だった。5連敗した9節・川崎戦後に片野坂監督は、「準備してきたことが上手くいかない。過密日程の難しさを感じている。言い訳にはできないが、(連敗の)要因になっている」と苦しい胸の内を明かした。さらに、ケガ人やコンディション不良によって強いられた流動的なメンバー編成では、戦い方を徹底できなかった。

 重苦しい雰囲気が漂い、打開策を見つけるには大幅な戦術変更や配置転換が必要かと思えたが、指揮官は変化を選ばずに継続を求めた。「(試合間隔が)短いのである程度、戦術をはっきりした。攻守の狙いを明確にした」と片野坂監督。リーグ再開直後は高い共通意識を持って戦えていたが、その中で"慣れ"のような部分も出てきて、コンセプトが少々ぼやけてきたように感じていた。

 例えば攻撃に関してのプライオリティにも、微妙な変化が出ていた。以前ならば「ボールを動かし、相手を動かすことでできた隙を狙う」という意識が強かったが、ボールを保持することに囚われていた。足もとへの各駅停車のパスが増え、大きなサイドチェンジや裏を狙う長いパスなどダイナミックさを失っていた。

 この暑さで運動量を求めることは、かなり厳しい注文ではあったが、相手の強度の高い守備をかわすには、パスコースを多く作りながら相手をいなしていくしかない。それができなければ、これまでの試合のように防戦一方になるのは仕方がない。それは守備面でも同様のことが言えた。1対1の局面で優位性を保つことは、現時点で難しい。個の勝負に持ち込まれると、どうしても劣勢になってしまうのだ。
 

次ページ序盤こそ横浜のハイライン・ハイプレスに圧されたが…

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