【現役監督のCL展望】経験値でアトレティコが凌駕。RBライプツィヒは退団したエースの穴が…

2020年08月13日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

似通ったチーム同士の対戦

ウパメカノ(左)とモラタ(右)マッチアップにも注目だ。(C) Getty Images

[チャンピオンズ・リーグ準々決勝展望]
RBライプツィヒvsアトレティコ・マドリー
●日時:8月13日20時(日本時間28時)キックオフ
●会場:ジョゼ・アルバラージ
●欠場者
・出場停止:RBライプツィヒ=なし アトレティコ=なし
・負傷などで欠場濃厚:RBライプツィヒ=コナテ(DF) アトレティコ=コレア(FW)、ヴィルサリコ(DF)

 RBライプツィヒとアトレティコは、ある意味で似通ったチームだ。どちらもボール支配にあまり執着しないし、また自分たちのスタイルを強引に押し通そうとせず、むしろ相手に合わせて戦い方を柔軟に変え、相対的な優位に立とうというアプローチを取る。主導権を握るよりも相手に握らせる方が自分たちのペースで戦えるところも共通している。

 あえて言えばアトレティコの方がより受動的で、積極的に相手に主導権を渡しつつ、相手のサッカーを壊すことに専念しながら逆襲の機会を虎視眈々とうかがう姿勢が強い。

 RBライプツィヒの問題は、シーズンを通して攻撃の中核を担ってきたヴェルナーが6月末でチームを離れてチェルシーに移籍し、最も重要なプレーヤーを失ったこと。やはりシーズン終了後の退団が濃厚なシックは、CL終了までレンタル期間を延長してチームに残ることになったものの、こうした通常とは異なる内部事情がチームの士気にネガティブな影響を与えないという保証はない。

 それ以前に何よりも、シーズン通算34得点という数字が示す通り、フィニッシュを一手に担ってきたヴェルナーの不在は、戦力的/戦術的にきわめて大きな損失だ。その爆発的なスピード、裏のスペースをアタックする優れたタイミングの感覚、そして正確なシュートといったCFとしてのクオリティーは、RBライプツィヒにとって最大の武器であるポジティブトランジション(守→攻への切り替え)からの速攻に絶対不可欠なものだった。代役となるシックにそれを期待することは不可能だ。
 
 中立地での無観客試合、しかも1試合のみの一発勝負というのは、過去に例がない特殊な状況だ。しかし、シメオネ体制が9年目を迎え、その間に決勝を二度も戦うなどCL決勝トーナメントでほぼ毎年主役を演じてきたアトレティコは、大舞台を戦う経験値において、RBライプツィヒを比較にならないレベルで凌駕している。

 アンフィールドという最も敵意に満ちたスタジアムの空気をものともせず、リバプールの猛攻を守り倒して延長戦で勝利をもぎ取ったラウンド・オブ16の戦いぶりは、このチームのメンタル的な成熟ぶりの証明だ。経験値ゼロのRBライプツィヒに対し、明らかな心理的優位に立って試合を戦うことは間違いないだろう。
 

次ページ「アンチフットボール」を平然と繰り返すだろう

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事