【福岡】「ケネディが決めたことは内心嬉しくなかった」流れを変えたデビュー戦、アカデミー出身FWの強烈な自負

2020年08月09日 中倉一志

東海大1部リーグ得点王の称号を引っ提げてアピスパに帰還

甲府戦でJリーグデビューを飾った東家。シュート精度の高いストライカーだ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

[J2リーグ10節]福岡2-2甲府/8月8日(土)/ベスト電器スタジアム

 1点ビハインドの73分、城後寿に背中をポンポンと叩かれて東家聡樹はピッチへと足を踏み入れた。クラブを愛してやまない城後が、同じくクラブを愛してやまず、アビスパでプロになるためにサッカーを続けてきた東家を送り出す。それを城後から東家へのクラブ愛のバトンタッチのように感じたのは私だけではないだろう。

 東家はアビスパU-15、U-18でプレー。トップチーム昇格はならず中京大へと進んだが、大学1年時のスタンドで見たJ1昇格プレーオフ決勝戦でアビスパが昇格を逃した悔しさが忘れられず、アビスパでプロになるためだけに力を蓄え、東海大学1部リーグ得点王の称号とともにアビスパに帰ってきた。そしてこの日、子どもの頃から憧れていたベスト電器スタジアムのピッチに立ち、プロデビューを果たした。

 短い時間でのプレーはゴールに結びつかなかったが、傾いていた試合の流れを甲府から取り戻すことに成功。チームは終了間際の遠野大弥のゴールでドローに持ち込んだ。本人は「ゴールを決めたかった。同点に持ち込んだが勝点2を失った形。デビュー戦だが複雑な気持ち」と悔しさを口にしたが、長谷部茂利監督は「得点にはつながらなかったが、ボールを引き出す、その場所にいる、味方につなげるという意味では、その空気は出せたと思う」と話す。それも彼に対する期待の表われだ。

 加入当初は、焦らずにじっくりと身体をつくり、少しずつ試合に絡めるようになればいいと話していたが、プロの中で競争することで負けん気の強さに火が付いた。試合に出たい、そんな気持ちが強くなるのに時間はいらなかった。「試合に飢えている」とは長谷部監督の言葉。本人は「ケネディ(三國ケネディエブス)が点を決めたことは、内心嬉しくはなかった。チームとしては良かったが、FWとしては、FWでない選手に結果を出されるということは悔しい。焦らずにとか言っていられないと思った」と話す。

 持ち味はスピードと決定力。「シュートセンス、決定力はチーム内で負けない自信はある」と本人も自信を持つ。「シュートの形では、アビスパに今いるFWの中で一番いい形というのも持っている」と鈴木惇が口にするように、右45度から放つシュートの威力と正確性はチームでもトップクラスだ。理想とする選手はレヴァンドフスキ。試合に出たら点を決める選手になりたいと話す。

 まずはプロ選手としての第一歩を踏み出した東家。ここから定位置争いの激しい競争が始まるが、勝ち抜く覚悟はできている。そして近い将来、城後と東家のアベックゴールで勝利することを多くのファン、サポーターが待ち望んでいる。

取材・文●中倉一志(フリーライター)
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