【川崎】嬉しい移籍後初ゴールにも自己評価が厳しいワケ。山根視来が抱える古巣・湘南戦への想い

2020年07月25日 本田健介(サッカーダイジェスト)

かつての仲間へ「この数か月で成長をした姿を見せたい」

練習で笑顔を見せる山根。調子も良さそうだ。(C)SOCCER DIGEST

 非常に向上心の強い選手なのだろう。さらに個性的で、アベレージの高いプレーヤーたちが集う川崎というクラブの環境がそうさせているのかもしれない。

 今季、湘南から加入し、右SBのレギュラーに定着した山根視来は、チーム始動から一貫した言葉を残している。「まだまだ」。自己評価は常に厳しいのだ。

 それでも順応度の高さは目を見張る。2018年限りでエウシーニョ(現・清水)が退団し、穴を埋め切れずにいた右SBに定位置を見い出すと、一様に新戦力が苦労する川崎の独特なパスサッカーにも適応。4-0で勝利した3節のFC東京戦では華麗なドリブル突破から低くて速いクロスでレアンドロ・ダミアンのゴールをアシストし、約20分後には果敢なオーバーラップからチームの4ゴール目をお膳立て。

 そして今週水曜の仙台戦では1-2の状況で相手のパスを高い位置で奪うと、カットイン。ゴール正面にポジショニングしていたFW小林悠との華麗なワンツーで抜け出すと、利き足ではない左足でGKの股を抜く冷静なシュートで移籍後初ゴールを挙げた。

 紅白戦などでもよく見られる川崎ならではの中央からの崩し。山根も「良い形でスピードアップできました。練習時に小さいコートでやるゲームではああいうシーンが多いので上手く出せたと思います。悠さんはシュート意識が凄く高い選手なので、もしかしたら自分でも打つかなとも考えましたが、僕の動きを見てくれていたのだと思います。だから遅れないように入れて良かったです。シュートは逆足だったので複雑には考えず、ふかさないこと、枠に入れることを意識してキーパーが前に出てきたので、股を狙って打ちました」と振り返る。

 もっとも試合を経るごとに存在感は増すが、口から出るのはやはり課題だ。

「満足できるものではないですし、点とアシストは今季、意識していますが、ビルドアップ、周囲との関わりというところはまだまだかなと感じます」

 傍から見れば、新加入選手としては十分なパフォーマンスだ。さらにここ数試合は4-3-3のシステムで、右ウイングの家長昭博との連係を向上させ、右サイドのキーマンにもなりつつある。その想いをぶつけてみても、実直な男はさらなる高みを見据える。

「昔よりはストレスなくできています。ただアキさん(家長)は絶対にボールを取られないので、そこの信頼があって、出して、走るを繰り返せているだけというか、狙って3人目で崩したり、裏に抜けたりなど、そういう形をより増やしたいです」

 ちなみに周囲との連係強化に関しては「味方のタイミングに合わせすぎていた面はあったので、アキさんと少し話した時に『自分のタイミングでやって良いんじゃないか』という話があり、良くなかった部分はあります」という。
 
 さて次戦、26日にホームで迎える第7節は、昨季まで4シーズンを過ごした古巣・湘南との初対戦となる。

 自らの成長のために移籍を選んだとはいえ、湘南は「サポーターの方、チームメイト、クラブスタッフの方、みんな好きです」という特別なクラブだ。

 桐蔭横浜大から入団後、3バックの一角としてレギュラーを掴み、プロとしての素地を築いてきた。

「ここまでサッカーをできているのは湘南のお陰です。外から湘南を見た時に感じることもありますし、一番楽しみな試合。感謝しても感謝し切れない想いがあります。だからこそ、この数か月で成長をした姿を見せたいです」

 意識するのは湘南でも学んだ「球際で負けない、走り負けない」プレー。さらなる進化を目指す山根が、古巣とのゲームでさらに高いポテンシャルを見せてくれそうだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
 
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