昨冬選手権4強、矢板中央の地道なスカウト活動の舞台裏。セレクションでのGPS機器導入に込めた想いとは?

2020年07月25日 松尾祐希

中学年代の公式戦が中止になる中、練習にも足を運んでセレクション前に事前把握

強豪校・矢板中央のセレクションの様子。80名ほどの精鋭が参加した。写真:松尾祐希

 全ては子供たちのために――。新型コロナウイルスの感染拡大で大会中止が相次ぎ、中学3年生は公式戦を戦わずに部活を引退する選手も少なくない。

 苦況に立たされた選手たちの可能性を広げるべく、高校サッカーの強豪校が新たな試みを取り入れてセレクションを行なっている。

 昨冬の高校サッカー選手権でベスト4に入った矢板中央。直近3年の同大会ではいずれもベスト8以上に勝ち進み、年々志望する選手が増えている。栃木県内や関東近郊に加え、全国各地から練習会に参加する者も珍しくない。しかし、今年度は前述の通り、どのチームも活動が滞った。高校の指導者も試合がない以上は選手の発掘をできず、今までとは異なるスタンスで見極めを行なわなければならない。矢板中央も例に漏れず、難しい中でのスカウトを余儀なくされた。

 とはいえ、現状を嘆いているわけにいかない。矢板中央は例年通り中学3年生を対象に練習会を行なう一方で、選手の発掘に工夫を凝らした。髙橋健二監督からスカウトを任されている金子文三コーチは言う。

「最初は昨年から回数をひとつ増やして、セレクションを5回行なう予定でした。ただ、われわれも大会がどうなるか分からないですし、無理に日程を組んでしまうと、開催できなかった時に迷惑をかけてしまいます。なので、回数を増やしませんでした。ただ、セレクションを開いても選手の把握が事前にできません。今年は公式戦がなくても見に行ける範囲でチームの練習を視察するようにし、個人的には選手を1回見ただけで実力をジャッジできないので、同じ選手を複数回見るようにしていました。1回見て良かったから誘いたい、1回見た時に悪かったから誘えない。そういうのはしたくないので、今年は練習に数多く足を運んだのです」

 足を使って選手を見極める。金子コーチは地道な活動で子どもたちの取り組みを具に見守ってきた。ただ、それだけでは把握しきれない。そこで金子コーチは各チームからオンラインでの説明会を依頼されれば快諾し、できる範囲で中学3年生たちに矢板中央の魅力を伝えたという。時には複数のクラブが参加し、200人ぐらいの規模になる時もあったが、丁寧に子どもたちへ言葉を紡いだ。
 

次ページセレクションに最新機器を導入したワケ「着けてプレーすることを知るだけで意味がある」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事