“育成の名門”ドルトムントの光と闇――加入決定の超逸材ベリンガムはサンチョらと同じ道を辿れるか

2020年07月24日 遠藤孝輔

18歳でCLデビューを飾ったCBは25歳で無所属に

ドルトムント移籍が決定した17歳のベリンガム。 (C) Getty Images

「BVB(ドルトムントの略称)の道のり、特に若手選手の成長を助けてきた歴史のおかげで、この決断は私にとっても家族にとっても非常に簡単なものでした」

 この夏のドルトムント加入が決まった17歳で、イングランドU-17代表に名を連ねるMFジュード・ベリンガムは、クラブ公式サイトでドイツ行きの理由を説明した。

 ベリンガムの言うとおり、昨今のドルトムントは出番を求める"若手逸材の桃源郷"となっている。世界有数の名手が集うメガクラブに比べて競争は激しくなく、早い段階でレギュラーの座をつかみ、チャンピオンズ・リーグ(CL)のような舞台で経験を積める可能性が大きいからだ。過度な期待を寄せずに、その成長を温かい目で見守るファンやメディアの存在も、若手が伸び伸びとプレーできる環境づくりにひと役買っているだろう。

 ドルトムントで近年台頭したヤングタレントの名前を挙げるのは難しくない。わずか1年の在籍で1億ユーロ(約125億円)以上の移籍金をもたらしたドリブラーのウスマン・デンベレ(現バルセロナ)、6000万ユーロ(約75億円)以上の高値でチェルシーに旅立ったユース上がりの"孝行息子"クリスチャン・プリシッチ、加入2年目の18-19シーズンにリーグ屈指のウインガーに飛躍したジェイドン・サンチョ、2年間の在籍で欧州指折りの右サイドバック(ウイングバック)に成長したアシュラフ・ハキミ(現インテル)が代表格だろう。
 
 ベリンガムが2~3年後、彼らのように自身の価値を何倍にも増幅させ、欧州制覇を狙うようなメガクラブから本気で狙われる存在になっていても不思議はないだろう。ただ、忘れてはならないのが、優秀な育成機関として高く評価されているドルトムントに所属しながらも、豊かな才能を開花させられなかった有望株が少なからず存在すること。つまり、ベリンガムはブレイクへの"約束手形"を手にしたわけではない。

 忘れ去られた「元・逸材」として真っ先に思い出されるのは、2013年に弱冠18歳でCLデビューを飾ったマリアン・ザールだ。そのマルセイユ戦後に"平手打ち→抱擁"というユルゲン・クロップ監督の独特な愛情表現を受けたCBはしかし、デビュー3戦目に失点に絡むミスを犯すと、その後は一度もトップチームでの出番に恵まれなかった。そして4部→3部→5部のクラブを転々とし、25歳となった現在は無所属となっている。
 

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