【岩本輝雄】格上相手に堂々と渡り合った横浜FC。なかでも印象に残った選手は…

2020年07月21日 岩本輝雄

余裕があって、冷静かつ楽しんでプレーしている

球際で激しく戦い、よく走り、パスを捌く。アンカーの佐藤はポゼッションを支える重要なキーマンだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ホームにフロンターレを迎えた横浜FCは、1-5と完敗を喫した。でも、スコアが示すような力の差はなかったと思う。

 0-1で迎えた後半のスタートから、59分に田代のゴールで同点に追いつくまでの内容はとりわけ素晴らしかった。組織立った"つなぎ"でペースを手繰り寄せ、フロンターレを押し込んでみせる。格上と見られる相手と互角以上に渡り合ったあの時間帯の戦いぶりは、現在のチーム力を存分に示したと思う。

 試合を通じて、ビルドアップも安定していた。リベロの田代やアンカーの佐藤が相手のウイングを絞らせるようなポジションをとり、そうやってできた外のスペースにウイングバックが落ちてきて、パスを受ける。サイドに起点を作ってから、佐藤が中で受けて、逆サイドに展開。一連の動きはスムーズで、幅を使って上手くボールを動かし、相手を揺さぶってみせる。

 理想を言えば、中で受けた佐藤から前にいるインサイドハーフに縦パスを入れるようなアクションも増えてくれば、テンポの良いサイドチェンジとのセットでより効果的な攻撃を繰り出せると思う。あとは、2トップがサイドに流れてパスを引き出すとか、敵陣のバイタルエリア付近での2トップとシャドーによるコンビネーションがさらに深まってくれば、ゴール数はもっと伸びるはずだ。

 そのあたりは今後の注目ポイントとして、個人で強く印象に残っているのが佐藤だ。在籍10年目のチームの中心的存在で、彼にとってJ1は初めての舞台になるけど、余裕があって、冷静かつ楽しんでプレーしているように見える。

 線は細いけど球際で激しく戦えるし、豊富な運動量を活かして前後左右に常に動き、パスを出し入れする。フロンターレ戦でもチーム内で一番の走行距離をマークするなど、とにかくよく走っているよね。ボールの置き所にセンスがあって、視野も広い。ポゼッションを支える重要なキーマンとして、下平監督からも厚い信頼を寄せられているんじゃないかな。
 
 フロンターレ戦は、横浜FCにとってポジティブな要素が多かったゲームだったと思う。ただ、先述したとおり、結果は1-5。後半の途中から細かいミスが目立ち始めて、そうなるとやっぱり苦しくなってきて、PKを取られたり、最後のほうはもしかしたら集中が切れたのか、失点を重ねてしまった。その点は修正すべきだと思う。

 相手の隙を逃さなかったフロンターレは、さすがの一言。いずれも途中交代で入った小林が2得点、三笘も自慢のドリブルで多くの見せ場を作るなど、選手層の厚みを見せつけたと思う。交代枠5人の特例ルールは、フロンターレのように駒が揃っているチームにとっては有利に働きそうだ。

 5試合を終え、4勝1分の無敗で単独首位。現時点で総得点14はリーグ最多、総失点3はリーグ最少の数字。再開後のこの勢いがどこまで続くのか。主力メンバーはもちろん、ベンチの層の厚さも断トツ。このままぶっちぎる可能性は十分にある。注目したい。

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