山形入団内定、尚志高・阿部要門が持つ特大級のポテンシャル!染野唯月の教えとエースの責任感を携えて――

2020年07月06日 松尾祐希

早期のプロ入り内定。世代トップクラスから吸収した“FWのイロハ”

昨年まではスタッフから甘さを指摘される場面もあった阿部。しかし徐々に責任感が増し、今ではチームを引っ張る自覚が芽生えつつある。写真:松尾祐希

 当たり負けしない屈強な身体に、パンチの効いた豪快なシュート。185センチ・79キロの体躯から繰り出すパワフルなプレーは高校年代で頭ひとつ抜きん出ている。

 昨年の染野唯月(現・鹿島)に続き、尚志高がJリーグに選手を送り出した。福島U-15からチームにやってきた阿部要門(3年)。来季からモンテディオ山形でプレーする大型ストライカーだ。

 3得点を奪った昨夏のインターハイでブレイクを果たし、同年9月には山形のトレーニングを体験。2度の練習参加を経て高い評価を得ると、今年の3月3日に異例の早さでプロ入りを決めた。

「今年はコロナウイルスの影響でJリーグの再開が遅れ、今後は過密日程で選手のコンディションが整わない可能性もある。僕も山形の特別指定選手になったので、出場するチャンスをいつでも掴めるように良い状態を作りたいです」

 本人も今季中のプロデビューに意欲を示しており、現状に満足する気はない。その表情からは覚悟が滲み、下級生時に見せていたような弱々しさは消えていた。
 
 今から1年前、阿部の定位置はベンチだった。入学当初からポテンシャルを高く評価されていたが、持ち前の身体能力を活かせずに力を持て余していた。その潜在能力を開花させる上で大きなポイントになったのが、昨年の尚志のエース・染野の存在だった。

「学んだことはたくさんある」(阿部)

 普段の練習から、世代トップクラスのストライカーから"FWのイロハ"を吸収。とりわけ、シュートテクニックやゴール前での振る舞いをつぶさに観察し、自らのものにしていった。

 迎えた夏のインターハイ。怪我を抱えていた染野がワンポイントでしか起用できない事情も重なり、飛躍のきっかけを掴む。5試合中4試合で先発起用されると3得点の大活躍を見せ、全国にその名を知らしめた。

 その直後に山形の練習へ参加。自信を深め、年末年始の全国高校サッカー選手権ではさらなる飛躍が期待されていた。しかし――、現実はそう甘くなかった。

 エースの染野が腰の負傷で欠場し、代わりに9番を託されたのだが、そのプレッシャーは想像を絶するものがあった。阿部は当時をこう振り返る。

「いろんなプレッシャーが自分にかかっていました。その中で活躍できるかどうかの挑戦だったんですけど、自分の仕事を全う出来なくて…。正直、大会前は不安とワクワク感を半分ずつぐらい持っていましたが、インターハイは(染野)唯月君がいなくてもしっかりプレーできたので自信はあったんです。ただ、守備を固めてくる相手を破るためには、唯月君の存在が必要だったんだなと思い知らされました」
 

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