元ブラジル代表MFが麻薬密売組織に関与か。フランスに残した「呪われた館」から3000万円を超える“現ナマ”が…【現地発】

2020年06月28日 結城麻里

本人は「早く売ってしまいたかった」と言うが…

思わぬ出来事に巻き込まれているバストス。 (C)Getty Images

 リール、リヨン、シャルケ、ローマなどを歴戦して昨年引退したブラジル人MFミシェル・バストスが、「脱税」および「脱税マネーローンダリング」の容疑で取り調べを受けていることが判明。その原因となった「呪われた館」が話題を呼んでいる。

 問題の館はリヨン近郊の閑静な住宅地にある。リールからリヨンに移籍してしばらくした2010年、バストスは妻の夢だったプールつき邸宅を77万ユーロ(約1億円)で購入。居住スペースは300平方メートルあり、映画鑑賞ルームを備え、さらに20万ユーロ(約2500万円)も投入して豪華なリフォーム工事をした。

 幸福をつかんでいたはずの2012年、バストスは在宅中に妻、息子とともに強盗に襲われてしまう。強盗は家主の頭に武器を突きつけて脅したという。その後、元ブラジル代表MFはシャルケにレンタルされ、複数のクラブを転々とし、この邸宅に住まなくなってしまった。

 代理人によると、バストスは当初、リヨンの選手に貸し出したいと思っていたようだ。しかし、「強盗に入られた館」という理由で、クラブは他選手に勧めるのを拒否。バストス自身も忘れられてしまい、2014年夏にはついにフランスにも正式に別れを告げた。
 

 こうして空き家となった屋敷には、ホームレスやごろつきが入り込むようになり、あちこちが破壊され、1日置きにアラームがけたたましく鳴り響き、夏には若者たちがプールに集まって騒ぐようになった。近所からの苦情も絶えなかった。

 バストスはフランス税務当局に負債があり、2016年には「3か月以内に家を売却せよ」との命令も出た。だが、バストスは何とか別途負債を返却し、ゆっくり家を売却する猶予を得た。ところが、なかなか買手がつかなかった。

 2017年7月、「リヨンで働いていた」という何人かの紹介で、代理人がある人物と接触。この人物は42万ユーロ(約5300万円)で邸宅を購入したという。購入者は代理人に16万ユーロ(約2000万円)を2回に分けて札束で渡し、現金は代理人の手で、スイスにいるバストスの口座に入金されたという。

 邸宅の当時の推定価格は90万ユーロ(約1億1250万円)だったというから、かなりの安売りである。バストスは「(売りに出したとき)値段をつけても、みんな高すぎると感じていた。みんながいわくつきの家だと知っていたからなんだ。…あの家はとにかく早く売ってしまいたかった」(『L’EQUIPE』紙)と語り、他意はなかったと強調している。

 多額の現金が動いたことについて、代理人は「現金のやりとりが大きな場を占めているブラジルで生まれ育ったから、あまりショックは受けなかった。もしフランスの教育を受けていたら、もっとショックだったかもしれない」と弁明した。

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