“アンフィールドの英雄”を前線へコンバート。シメオネはなぜ2トップを断念したのか?【現地発】

2020年06月20日 エル・パイス紙

オサスナ戦で1ゴール・2アシスト

中断までのCLで王者リバプール撃破の立役者となったのがこのジョレンテだ。(C) Getty Images

 ラ・リーガ第29節のオサスナ戦でマルコス・ジョレンテが途中出場で1ゴール・2アシストの活躍を見せ、 "マニータ"(5-0)達成に貢献した。

 ジョレンテと言えば、リバプール戦(チャンピオンズ・リーグのラウンド・オブ16第2レグ)で同じく途中出場で2得点を挙げ、殊勲の勝利(3-2、トータルスコア4-2)の立役者となったアンフィールドの英雄だ。その鮮烈なパフォーマンスは新型コロナウィルスの影響による中断期間の間も、アトレティコ・ファンの記憶の中で生き続けていた。

 シメオネ監督もその働きを心に留めていたひとりで、事実、練習でジョレンテのFWへの適性を試していた。ラ・リーガ再開後のアスレティック・ビルバオ戦とオサスナ戦での起用はその成果であり、ジョレンテも結果で期待に応えている。
 
 シメオネが昨夏、マンチェスター・シティに移籍したロドリの後釜として獲得したセントラルMFを、かつてのラウール・ガルシア(現アスレティック・ビルバオ)を想起させるセカンドトップへのコンバートに踏み切ったのはチームの台所事情とも無関係ではない。

 アトレティコにはサウール・ニゲスというゴール前への飛び出しをセールスポイントにしているMFがいるが、シメオネはもう随分前からその豊富な運動量を見込んで攻守のバランスを整える便利屋としての起用をしている。今シーズンは本職のレナン・ロディとマリオ・エルモソを差し置いて左サイドバックに起用されることも珍しくない。トーマス・パーテイも攻撃的MFとして試されたことがあるが、ビルドアップの精度の向上を期待して目下5番(ボランチ)で育てている真っ只中だ。

 そもそもシメオネが開幕当初に思い描いていた青写真はジエゴ・コスタとアルバロ・モラタの2トップだった。しかし長期間怪我で戦列を離れていたジエゴ・コスタのコンディションが上向いてきたこのタイミングで前線の一角にMFを起用する考えに至ったのは、2トップ採用による守備面でのリスクを考慮したためだという。

 シメオネがその意図を説明する。

「当然マルコスはMFとしても振る舞えるので、実質中盤が1枚増えることになる。プレシーズンキャンプからアルバロとジエゴの2トップ起用の可能性を探ってきたが、(中断期間を経た)現状、FW2枚を後方で支えるだけのチームとしての準備が最善の形でできていない。試合の展開に応じてアルバロとジエゴの得点力を活かせる場面は必ずあるし、いまはそういった使い方のほうがいいと考えている。そのうち2人を同時に起用する試合も出てくるかもしれない。しかしすべてはチームの状態次第だ」

 その発言からはアトレティコのアイデンティティーである堅守を維持したいという強い思いが伺えるが、同時に2013-2014シーズンにラ・リーガを制覇したチーム、そして自らの現役時代がそうだったように、シメオネは2列目の得点力を重要視する。

「マルコスには強靭なフィジカルに加え、2列目からの飛び出しもある。リバプール戦でコスタに代えて投入した時、なぜ守備的な交代をするんだと驚いた者は少なくなかっただろう。でもマルコスはそういう選手なんだ。あの場面でも重要な役割を果たすことで自らの価値を示してくれた」
 

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