【J再開後の注目株|山形】JFLから駆け上がって来た“未完のタイキ”。主力2人が移籍で抜けた穴を埋められるか

2020年06月03日 頼野亜唯子

高校時代の測定タイムは50メートル6秒8と平凡だったが

今季、金沢から加入した加藤。スピードに乗ったドリブルと前線への鋭い飛び出しでゴールを目指す。写真:田中一生

 加藤大樹。「大樹」と書いて「タイキ」と読む。

 スピードが武器の攻撃的MFだが、高校選手権でハットトリックを記録した立正大淞南高時代の測定タイムは50メートル6秒8と平凡。だから昔から加藤を知る人は「まさかスピードでプロに通用する選手になるとは思わなかった」と驚いている。本人曰く「スポーツ大学(びわこ成蹊スポーツ大)へ行って、トレーニングについていろいろ教わって、筋肉がついた。それで速くなった」。遅咲きのスピードスターだ。

 大学を卒業して進んだ先は、Jリーグではなかった。JFLのSP京都FC。前身は佐川印刷SCである。しかし加入1年でSP京都FCが解散し、移籍したレノファ山口で2年、ツエーゲン金沢で2年。そして今季、山形にやってきた。

 SP京都(佐川印刷)が出発点のJリーガーと聞けば、近来思い浮かぶのは藤本憲明(ヴィッセル神戸)ではないか。そこからJ3鹿児島ユナイテッド→J2大分でJ1に昇格し、昨季途中で神戸に完全移籍した。絵に書いたような"成り上がり"の成功譚である。

 そして、加藤もまた同じような道の途上にあると、信じていけない理由はない。次のステップは、山形でJ1に昇格することだ。ちなみに加藤と藤本は2015年にSP京都で一緒にプレーしており、共に9得点を挙げてチーム得点王になっている。
 
 山形は昨季、リーグ6位ながらJ1昇格プレーオフに参戦し、2回戦まで進んだ。その原動力は伝統の堅固な守備であり、今季も継続・熟成の布陣が整っているが、攻撃陣の編成では痛手を被った。主力二人の流出だ。

 ひとりは、右シャドーで42試合出場したルーキー・坂元達裕(現C大阪)。仕掛けて切り裂くドリブルでゴール前に侵入。先輩のチームメイトも「あいつがいないと攻撃が始まらないくらいの感じだった」と振り返る。もうひとりが、左右のウィングバックを務めた柳貴博(現仙台)。縦の推進力でチームをゴールに向かって押し上げる役割を果たしていた。加藤には、昨季に主力を張ったこのふたりのようなゴールに向かう勢いと迫力、そしてなにより得点を期待している。

 

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