いま、アギーレは何を思う――旧知の『マルカ』紙記者が胸中に迫る

2015年02月04日 ファン・カストロ

「この結末は数か月前から予想できた」

アギーレは解任をどう受け止めているのか。旧知のカストロ記者が胸中に迫る。 (C) Getty Images

 日本はアギーレを信じるべきだ――。
 
 メキシコ人指揮官とは旧知の間柄である『マルカ』紙のファン・カストロ記者が、『サッカーダイジェストWeb』にそう綴ったのは、解任の報が駆け巡る数日前のことだった。
 
 ハビエル・アギーレは、解任をどう受け止めているのか。カストロ記者が再びその胸中に迫った。

――◆――◆――
 
 ハビエル・アギーレは数か月前から、この結末を予想していたと言う。ただ彼自身、この決定は不当だと考えている。
 
 現時点では告発が受理されただけで、有罪の判決が下ったわけではない――。それがアギーレの言い分だ。それでも、温かく迎え入れてくれた日本と日本人には感謝したいと言う。
 
 解任の一報は、マドリードの寒い冬の朝に訪れた。スペインで休暇中のアギーレは、その時、マドリードに滞在していた。もちろん、望んだ形での終焉ではなかった。しかし、彼自身にとっても、家族にとっても、それは驚きの知らせではかった。そのサッカー人生でおそらく最大の失望である今回の一件は、予測できたことだったのだ。
 
 アギーレは、日本サッカー協会内外で自身の解任を求める動きが高まっているのを感じ取っていたと言う。騒動の真っ只中に身を置く当の本人に、それが分からないわけがない。
 
 アギーレはいまでも自分は無罪であると固く信じて疑わない。2月末にスペインで始まる捜査にも彼は冷静に立ち向かうだろう。全身から発しているのは、自分は何も間違ったことはしていないという断固とした自信である。
 
 それではなぜ、アギーレは「この結末は数か月前から予想できた」と私に語ったのだろうか。その理由はいくつかある。
 
 まず、日本では告発の受理を非常に重く見る文化的背景と国民性があるということだ。
 
 以前に寄稿した原稿で繰り返し指摘したように、告発受理それ自体はスペインではほぼ何も意味しない。捜査が始まり、その結果によって公判が開かれる、そのスタートに過ぎない。
 
 くどいようだが、「告発受理=有罪」ではなく、罪が確定するのは以上の手続きを踏んだうえでだ。しかし日本では、告発自体を非常に重く見る向きがある。これは文化や国民性の違いでもあり、仕方のないことだろう。アギーレもその点は理解し、受け止めていた。
 
 アギーレが日本と日本人に対して恨みを持つことは絶対にない。アギーレにそう思わせるような態度を、日本人は取っていないからだ。
 
 それでも日本サッカー協会がアギーレの証言を待たずに、告発の受理という段階で解任に踏み切ったのは残念だった。
 
 任期途中での契約解除となったが、違約金はなかったと言う。アギーレはこの点では常に紳士的な態度を貫いており、これまで率いたクラブでも終わり方で揉めた過去は一度もない。

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