ヴェンゲルがアシスタントコーチに「黙れ!」と激高!? 部下を叱責した理由は“天才MF”にあり

2020年05月23日 サッカーダイジェストWeb編集部

「もしも、彼を叱ったら…」

教え子たちの指導方法を熟知していたヴェンゲルは、個々の対応の仕方も変えていたようだ。 (C) Getty Images

 人間がやるスポーツである以上、指揮官は選手たちの能力だけでなく、個々の性質も把握しておかなければならない。元アーセナルのレイ・パーラーが明かしたエピソードによれば、名将アーセン・ヴェンゲルは、選手の性格に応じて接し方を変えていたようだ。

 アーセナルの黄金期を知るパーラーによれば、ヴェンゲルは出来が良くなかったある選手を叱責しようとしたアシスタントコーチをたしなめたことがあったという。その選手とは、元フランス代表のロベール・ピレス。ティエリ・アンリらフランスの仲間たちとともに、2003-04シーズンの無敗優勝に貢献したメンバーのひとりでもある。

 英メディア『talkSPORT』で、パーラーは、「ピレスを叱ることは本当にできなかったんだ。守備に戻らなくても叱責できない。前に行くのがとてもうまいからだ」と話した。

「だが、もしもピレスを叱責したら、彼は殻に閉じこもり、ボールを欲しがらなかったんだよ!」

 さらにパーラーは「ヴェンゲルはどの選手を叱責してよいか、どの選手はダメかを正確に分かっていた。ロベールのプレーが良くなかったある試合のハーフタイムに、(アシスタントコーチの)パット・ライスが彼を叱責しようとしたのを覚えている」と話した。
 

「ヴェンゲルが言ったんだ。『ノー、黙れパット!』とね。彼は、『ロベール、続けろ。ボールを持ち続け、トライし続けろ』と言ったんだ」

 アーセナルの守備を支えたレジェンドは、「ロベールを責めたら、それは彼を交代させるのと同じだったんだ。彼はそれに応えなくなってしまうからね」と続けている。

「自分を責める者に応じてみせようとする選手たちもいる。だから、どの選手がしかっても返してくるか、本当に選手の性格を知っていなければいけないんだよ。ヴェンゲルはそれをしていたんだ」

 幾人もの名手を育て上げてきたヴェンゲルの巧みな手綱さばきこそ、指導の難しさを表しているといえるだろう。

構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部
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