「サッカー人生は長くなくてもいいや」…そう考えていた柏木陽介の意識が変わったふたつの理由【浦和】

2020年05月12日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

「38歳までやれたらいいな」

取材はオンライン会議アプリ「Zoom」を使って行なわれた。柏木は心境の変化を語ってくれた。(C)SOCCER DIGEST

「正直以前は、サッカー人生はそんなに長くやらなくてもいいやって思っていたんですけど、それを長くしたいなと。ちょっとでも長く、浦和レッズで、スタメンで出てやりたいなという気持ちがすごく強くなっています」

 新型コロナウイルスの影響でJリーグは延期が続いているが、浦和の柏木陽介にとってこの中断期間は有益な時間になっているようだ。心境には明らかな変化が生まれている。

「サッカー選手として、人として、見つめ直せたので、そういう意味では有意義に使えた。ベテランと言われる年齢で、やっぱり試合に出なきゃ契約をもらえないという状況。そういう部分で難しい想いがある。ただそういう気持ちが自分たちを強くしてくれているのかなと思う。ネガティブ過ぎず、自分がやれることをしっかりやって、試合が始まった時に力をさらに出せるように意識して過ごしている」

 自分を見つめ直し、サッカー選手としてのキャリアについても改めて考えるようになった。だからこそ、「ちょっとでも長くプレーしたい」という気持ちが強まった。
 
 昨年12月に32歳になった柏木は、「38歳までやれたらいいな」と具体的な将来の目標を口にする。

 なぜ38歳か――。
「なんとなく38歳くらいからはどうしても体力的に落ちてしまって、本当の意味でしんどいのかなと思っている。ただ35歳を超えたら38歳まではいけるかなと。それに38歳までできた時に、レッズに対して何かできることを考えているのもあります」

 できるだけ現役を続けたいと考えるようになったきっかけは、ふたつある。

 ひとつは、昨季の不調を乗り越えた経験だ。昨年は右膝の負傷などで離脱を繰り返し、キャリア最少タイの17試合の出場。一昨年はリーグトップの13アシストをマークした輝きは、そこにはなく、まさかの0アシストにとどまった。しかし今年は、それを挽回しようと例年以上に意欲的に取り組み、公式戦2試合で先発と好スタートを切った。

 そうして、改めてサッカーの楽しさを感じたという。

「昨年はしんどかったというか、自分でも全然ダメで……。気持ち的にも、プレーでも、チームに迷惑をかけた。今年は初めから100パーセントで練習に取り組んで、そしたら、よりサッカーの楽しさを感じられた。こういうところで真剣にやって、年を重ねても、若い選手と競争して試合に出て活躍できたら、どれだけ楽しいことなんやろと思えた」

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