ビデオ取材、練習試合の一部ライブ配信、トークショー、クイズ…浦和レッズの多彩で高質なコンテンツは、いかにして生まれるのか

2020年05月07日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

浦和がこだわるのが、質とタイミング

中断期間が続くJリーグだが、浦和は趣向を凝らした企画を発信する。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 新型コロナウイルスの影響で再開延期の目途が立たない状況だが、Jリーグの各クラブが、自宅にこもるファン・サポーターに向けて、趣向を凝らした企画を発信している。

 そんななか、様々な角度からアプローチしているのが浦和レッズだ。オンライン会議アプリを使った選手取材、TwitterやInstagramのLIVE機能を活用したトレーニングマッチの一部ライブ配信、トークショーやファンとの交流など、多種多様なツールを活用して、情報発信を続けている。

 まだ練習場でトレーニングができていた3月頃、いち早くTV電話での取材を取り入れたのも浦和だった。感染予防のために取材は制限しつつも、メディアへの露出をなくすことはしなかった。チームでの活動を自粛し、在宅勤務が中心となった今も、複数メディアへのオンライン取材は毎週実施している。

 広報部長の山本洋平氏は言う。

「毎日行っている広報ミーティングでは、メディアの皆さんの先には何万人、何十万人というファン・サポーターやステークホルダー、ホームタウンの方々がいらっしゃるので、みなさんが楽しめて、喜んで下さるにはどのようにすべきか、そのことを意識して、いかに戦略立ててやっていくかが重要だと話をしています。単純に練習が非公開だから取材対応を行なわないという短絡的な考え方ではなく、工夫を凝らしてみようとしたなかで、ビデオ通話のアイデアが出てきました。他クラブの広報スタッフの方からも、どういう状況かとか、取材者はどのくらいいるか、対応選手はどう決めているのか、反響はどうなのかとか、そういった問い合わせもいただきました。Jリーグ全体でコロナ災禍を乗り越えていく必要がありますし、互いに刺激し合っていければいいと思っています」
 
 SNSの活用にも積極的だ。15年に立ち上げた、Jクラブ初の公式オウンドメディアを中心に、TwitterやFacebook、Instaglam、YouTubeでの情報公開を強化。この中断期間には、自宅で悶々としているであろうファン・サポーターに向け、オンライン会議アプリ用のバーチャル背景や塗り絵、クラブの歴史にまつわるクイズを掲載した。

 オウンドメディア担当の石井茂雄氏は「選手も、パートナーのみなさんも、ファン・サポーターも、浦和レッズに関わる人たちが楽しめるものを届けられるように努めています。思うような成果が出ないこともありますが、でもそこはやり続けるしかない。浦和レッズを支えてくださるすべての方々に対して誠実に向き合うということを大切にしながら、日々アイデアを練ってネタ切れの状態とならぬよう心掛けています」と話す。

 ただし、単純に"ネタ"を多くあげればいいというわけではない。浦和がこだわるのが、質とタイミングだ。いつ、どのようにあげるか、"最善策"を見極めるために、複数部署のスタッフで構成された独自のタスクフォースの組織を作った。

「試合がないということは、つまりパートナー企業のスタジアム露出や、それに連動したメディア露出がないということになる。いかにパートナー企業に寄り添い、一緒になってこの難局を乗り越えていけるか。そうした考えから発信強化のタスクフォースの組織を作りました。社内のアイデアを持ち寄ったり、選手からの意見を取り入れたりして、露出量だけではなく、その効果の最大化を図っています」(山本氏)
 

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