名将ファーガソンが「天才」と認めた逸材はなぜ消えた? 元マンU戦士が語る「間違いなく1億ポンドクラスだった…」

2020年04月30日 サッカーダイジェストWeb編集部

目利きのファーガソンが認めた逸材

リンガード(左)やポグバ(中央)とともにユナイテッドの未来を担うと期待されたのが、モリソンだ(右)。 (C) Getty Images

 サッカー界には成功を収めた数多くのスターがいる。その一方で、逸材と持て囃されながら、実力を発揮しきれずに表舞台から消え去った選手も少なくない。

 元イングランド代表MFのラベル・モリソンも、そんな"消えた天才"のひとりだろう。

 マンチェスター・ユナイテッドの下部組織出身のモリソンは、2011年にポール・ポグバやジェシー・リンガードとともにFAユースカップ優勝を経験。トップチームでもデビューを飾り、その将来を大きく期待されていた。

 あの名将アレックス・ファーガソンが「これまで契約したどの若者にも負けない天賦の才を持っている」と評価し、当時のユナイテッド関係者から、「ジョージ・ベスト以来の天才が来た(英紙『The Sun』)」とも評されたモリソン。だが、自らの"愚行"によってキャリアを棒に振ってしまうのだ。

 遅刻や無断欠勤が常習化していただけでなく、友人が起こした強盗事件の被害者を脅したり、交際相手とのいざこざで裁判沙汰となったりと、トラブル続きだったのである。

 チームの和を乱す"問題児"と化したモリソンをファーガソンが許すはずもなく、12年の夏にウェストハムに放出。以降、彼のキャリアは暗転し、一時はメキシコにでプレーするなど、計4か国8チームを渡り歩くはめになった。
 

 そんな逸材を知るイングランド・サッカー界のレジェンドの一人が、元マンチェスター・ユナイテッドのリオ・ファーディナンドだ。

 ユナイテッドのクラブ史に残るCBとしても知られるファーディナンドは、モリソンの規格外のポテンシャルについて、ポッドキャスト番組『Beautiful Game』で次のように話している。

「ラベルの才能は段違いのものだ。他の若手とは全く違ったんだよ。私はいつも言っているが、自分のキャリアであんな14歳の選手を見たことはなかった」

 ゆえにファーディナンドは、モリソンを正しく導けなかった歯がゆさを語る。

「よく彼に言っていた。『うちに来い』とね。だけど、ファーガソン監督は、それを認めなかった。『ラベルとのやり取りから離れろ』と言われたよ。クラブが対処できるものだからだっていう話だった。

 でも、本当に彼を想って対処できる適切な人がいれば、ラベルは間違いなく1億ポンド(約140億円)クラスの選手になっていただろうと思う。しかし、そんな人はかつてのユナイテッドにはいなかった。今もいないよ。路上で生活していたこともある選手と同じようなバックグラウンドを持って、彼らと対等に話すことができるような人物はね……」

 素行不良によってトップスターにはなり切れなかったモリソンだが、今年1月から英2部のミドルスブラに所属している(そこでも出場は2試合のみと戦績は芳しくないが……)。

 27歳となったモリソンが、再び日の目を浴びる日はやってくるだろうか。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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