現実味を帯びるカバーニのサンパウロ移籍。ウルグアイ代表の“元ルームメイト”が提示した「プライスレスな条件」とは?【現地発】

2020年04月25日 リカルド・セティオン

故郷の近くでプレーしたいという気持ちが芽生え

今シーズン限りでパリSGとの契約が切れるカバーニ。まさに引く手あまたの状況だ。(C) Getty Images

 南米サッカー最大の謎、それはウルグアイだ。面積は南米で2番目に小さく、人口はたったの350万人。それなのにサッカーにおける存在感は絶大だ。大国のブラジルとアルゼンチンにも引けを取らない。ワールドカップを二度制し、コパ・アメリカでは15回の優勝。クラブレベルでも、コパ・リベルタドーレスでウルグアイのチームは8度も南米王者に輝いている。

 現代のウルグアイの顔といえば、やはりルイス・スアレスとエディソン・カバーニだろう。前者はバルセロナで、後者はパリ・サンジェルマンでゴールを量産してきた。しかし、どちらも33歳ともう若くはない。キャリアの終盤に差し掛かっていて、次のW杯でプレーする保証はない。

 スアレスの方は、少なくともあと2年はバルサに残るだろう。一方のカバーニは、パリSGを去るのがほぼ決まっている。彼ほどの偉大な選手であれば、欲しがるクラブのリストは驚くほど長い。

 なかでもトッテナム、ニューカッスルはその筆頭にある。アトレティコ・マドリーも2年ほど前からラブコールを送っている。ウルグアイのペニャロールとナシオナルも「最後の花道は祖国で」と誘っているし、中国からも、ロシアからもオファーはある。イタリアでは、古巣のナポリとパレルモも彼を呼び戻そうとしている。

 第一希望はアトレティコだろう。冬に交渉が決裂に終わったが、彼自身はまだ興味を持っている。次がイングランドの2チーム。ただし、プレミアリーグのインテンシティーはベテランには難しい。キャリアの終盤を汚す可能性もある。

 しかも、現在のカバーニは少し疲れている。2007年にウルグアイを離れてから13年。ヨーロッパサッカーのハードなプレッシャーの中で戦い続けてきた。彼の中には、故郷の近くでプレーしたいという気持ちが芽生えてきている。

 そこで候補に挙がったのはブラジルのサンパウロだ。

 これまでもカフー、ライー、トニーニョ・セレーゾ、レオナルド、ミューレルと数多くのスターを輩出してきた名門では、優秀なウルグアイ人選手がプレーしてきた。ペドロ・ロチャ、ダリオ・ペレイラ、パブロ・フォルラン(ディエゴ・フォルランの実父)、ディエゴ・アギーレらだ。
 
 実はサンパウロほどウルグアイのサッカーを愛しているチームはない。2012年にはこれまでプレーしてきたウルグアイ人選手たちに敬意を表わしてウルグアイカラーのスペシャルユニホームを作り、2019年にもサードユニホームをウルグアイ代表と同じ水色にしてしまった。こんなマネをするのは世界中でサンパウロだけである。

 また、その資金力ははブラジルでトップ3に入る。カバーニの元チームメイトでもあるダニエウ・アウベスに150万ドル(約1億6000万円)の年俸を払うのに躊躇しなかったし、元スペイン代表DFのファンフランは250万ドル(約2億7000万円)の年俸をもらっている。カバーニにも360万ドル(約4億円)近くを出すことはできるだろう。ただ、それでも現在のカバーニの年俸の20%ぐらいにしかならない。報酬だけで考えれば、サンパウロが争奪戦に加わるのは難しい。

 しかし、サンパウロはプライスレスな条件を提示して、彼を迎え入れようとしている。その鍵となるのがディエゴ・ルガーノの存在だ。ウルグアイ代表でキャプテンも務めたDFで、サンパウロで現役を引退し、現在は幹部を務めている。
 

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