【中国 0-2 オーストラリア】分かっていても止められない!“日本の天敵”ケイヒルが開催国を4強へ導く

2015年01月23日 熊崎敬

「ケイヒルにクロスを!」

鮮やかなオーバーヘッドと滞空時間の長い得意のヘッドで2得点。ケイヒルが開催国オーストラリアをベスト4へと導いた。 (C) Getty Images

 開催国オーストラリアがエース、ケイヒルの2ゴールで中国に快勝(2-0)。準決勝に駒を進めた。日本が準々決勝でUAEを下せば、1月27日(火)、ニューカッスルで決勝進出を懸けて対戦することになる。
 
 グループリーグ3戦目で韓国に敗れたことで、オーストラリアのポステコグルー監督は批判にさらされることになった。特に主力を温存した采配は、多くのメディアから叩かれた。
 
 開幕戦で負傷したジェディナク主将が待望の復帰。攻撃的な布陣を敷いたオーストラリアは前半からボールを支配した。だがショートパスをつなぐが、なかなかゴールに近づけない。自陣のスペースを隙なく埋めた中国の守りに苦しみ、前半は無得点。77パーセントという高い支配率はスコアには反映されなかった。
 
 パスはつなぐがゴールは遠い……。韓国戦を思い起こさせる展開だった。だが、「サッカルーズ」は後半立ち上がりに嫌な空気を一掃する。
 
 決めたのはケイヒル。ブレッシャーノの右CKは一度はクリアされたが、これをフラニッチがふたたび頭で戻す。落下地点にはケイヒル。オーストラリア代表の最多得点記録保持者はゴールに背を向けたまま豪快に身を躍らせ、難しい角度からオーバーヘッドを決めてしまった(49分)。
 
「ケイヒルにクロスを!」
 観客席には、エースのゴールを期待するフラッグが揺れていた。そんなファンの願いは65分、ふたたび現実のものとなる。
 
 左サイドを駆け上がったSBデイビッドソンがクロスを上げる。ゴール前にはケイヒルと敵がふたり。ボールの落下地点に入り込んだ彼は長い滞空時間で空中に留まり、強烈なヘッドを右隅に捻じ込んだ。
 
 かつてチリ代表のサモラーノが空中戦の強さからヘリコプターと呼ばれたが、ケイヒルの高さ、滞空時間はサモラーノに勝るとも劣らない。分かっていても止められないのだ。
 
 エースの2ゴールによって勝利を引き寄せたオーストラリアは、疲労とイエローカードを考慮して交代を有効に使いながら終了のホイッスルを聞いた。
 
 終盤に迎えた多くのチャンスを決められなかったが、オーストラリアは3戦全勝でグループBを突破した中国に地力の差を見せつけた。韓国に敗れたショックも、これで一掃されるだろう。
 
 だが、その強さは決して圧倒的なものではない。ポステコグルー監督は「サッカルーズ」にポゼッションの概念を植えつけたが、スピードや精度には、まだまだ改善の余地がある。中盤でパスを引っかけられ、復帰したジェディナクがしばしば危険なタックルを繰り出す羽目になった。
 
 それでもエースがきっちりと仕事をしたのは大きい。オーストラリアはやはりケイヒルのチームだ。短いパスをつなぎながら敵陣に押し込み、FK、CKといったセットプレーが増えてくると、ゴールの予感が高まってくる。ケイヒルが跳ぶたびに、スタジアムが盛り上がる。
 
 オーストラリアに勝つには、セットプレーを減らすことが重要なテーマ。だが、それは簡単なことではないだろう。
 一方、敗れた中国だが、その戦いぶりは好感が持てるものだった。前半は守りを重視、スコアレスで折り返したところまでは彼らの狙い通りだった。後半、ペラン監督は交代によってサイド攻撃の態勢を整えようとしたが、直後に失点を喫したことがゲームプランを狂わせた。
 
 それでも彼らは敗色濃厚な終盤もしっかりとパスを回して、サイドからゴールを脅かした。中国というと精神面の脆さを長く指摘されてきたが、この大会の彼らは暴発することなく、最後までハイレベルに組織されたプレーを続けた。伝統的なフィジカルの強さに加えて、戦術の柔軟性にも見るべきものがあった。
 
 この流れを継続することができれば、「眠れる獅子」はワールドカップ予選でも侮れない敵になるかもしれない。
 
取材・文:熊崎敬
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