「もうミスする権利はない!」CL無観客試合の日、“スタジアム外”に3000人が集結! パリSGサポーターの奮起は、なぜ起きたのか?【現地発】

2020年03月13日 サッカーダイジェストWeb編集部

新型コロナウイルスの影響で無観客となった一戦

無観客試合となったスタジアムの周囲に集ったサポーターたちは、試合後も花火を打ち上げ続けた。 (C)Getty Images

 パリジャン(パリ人)がまたひとつ新しいものを創り出したと、現地では喝采と感動を呼んでいる。

 あらゆる災厄がべったり纏わりつき、「呪われた試合」になりそうだったチャンピオンズ・リーグ(CL)のパリ・サンジェルマン対ドルトムント戦。思えば、冴えない内容でファーストレグに敗北してからこの3週間というもの、パリSGをめぐっては異様なニュースばかりが報じられていた。ざっと書き出すだけでも、これだけある。

・ネイマールが自分の体調管理に関してクラブを批判
・プレスネル・キンペンベの兄がトーマス・トゥヘル監督を侮蔑
・敗北48時間後に、南米選手3人の合同誕生パーティーで上半身裸のバカ騒ぎ
・パーティーをめぐって、選手たちがレオナルドSDとトーマス・トゥヘル監督に猛反論
・トゥヘル監督が提案したスペイン合宿を選手たちが拒否
・ボルドー戦でチアゴ・シウバが負傷、ネイマールもレッドカードで1試合出場停止に
・ストラスブール戦が新コロナウィルスの影響で延期、飛行機でとんぼ帰り
・新コロナウィルスの影響で、ホームでのセカンドレグが無観客試合に
・キリアン・エムバペが発熱

 最後のふたつは、残酷な「トドメ」としか言いようがなかった。シュールな空っぽのパルク・デ・プランスで、一昨年と昨年に続き、またしても無残にCLから敗退するパリGSの姿が、人々の脳裏を暗く塗り潰した。

 ところが――。サポーターたちは負けなかった。数日前から密かに準備していた計画を実行に移したのである。それがスタジアムに入ることができなくても、スタジアムの周りで大応援を繰り広げる、という前代未聞のプランだった。

 最もコアなサポーター集団CUPが呼びかけた集合時間は19時。これに3000人以上が応じ、パルク周辺は発煙筒と爆竹で真っ赤に燃え上がった。すぐ近くのカフェは臨時店員を複数雇ってフル稼働し、嬉しい悲鳴をあげた。一方の当局は、街頭デモを禁止しないという民主主義の原則にのっとり、機動隊を派遣しつつも、サポーターの行動を見守ったのだ。

 やがて選手たちの公式バスが到着すると、サポーターたちはさらに一層発煙筒と爆竹を炸裂させた。真っ赤な列を2つに割ってバスを歓迎し、同時に車体を激しく叩きまくった。

 これは「もうミスする権利はないのだと選手たちに知らせる手段だった」とサポーターは言い切った。驚愕のあまり、バスの窓に顔を張りつけてこれらを見つめたのは、ネイマールら外国人選手だ。

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