「クラブをタダで譲ります」経営難に苦しむ中国超級の天津天海がまさかの“ゼロ元提示”を決断!

2020年03月06日 サッカーダイジェストWeb編集部

負債総額はおよそ155億円にのぼる

2018年にはパト(右)らを擁してACLで8強進出。あれから2年、天津天海はクラブ存続の危機に瀕している。(C)Getty Images

 中国スーパーリーグの天津天海が3月5日、公式SNSで異例の声明を発表した。

 兼ねてから深刻な経営難に陥っていた同クラブは、「我々はついに最難関の局面に達した。中国超級(スーパーリーグ)でのポジションを守るため、熟考の末に苦渋の決断を下した」と記し、「我々の100%の経営権をゼロ元(無料)で譲渡する」と明かしたのだ。

 日本のファンにとっては、天津権健の名のほうがピンと来るだろうか。2006年に産声を上げて、毎シーズンのごとく昇格を繰り返し、ついに2017年に超級へ到達。ファビオ・カンナバーロ監督が指揮を執り、元ブラジル代表FWアレッシャンドレ・パトや、ベルギー代表MFアクセル・ヴィツェルらスター選手を擁して、2018年シーズンにはJリーグ勢とアジア・チャンピオンズリーグで鎬も削った強豪だ。

 しかしながら、転落もあっという間だった。

 オーナー会社である国内有数の漢方薬会社『権健』が、マルチ商法と虚偽広告掲載で告発される国家的大事件が起こる。クラブからの経営撤退を余儀なくされ、天津市体育局が暫定的に管理下に置いたのは、2019年1月のこと。チーム名は天津天海に変更されてリスタートを切ったが、2019年シーズンはかろうじて残留にこぎつける有り様で、負債も一気に膨らんだ。クラブの市場価値が1億ドル(約107億円)なのに対して、現在の負債総額は1億4500万ドル(約155億円)に及ぶ。

 ただし、天津天海は新オーナーに負債額のすべてを補填させる考えはなく、「交渉の余地がある」としている。

 とはいえ、チームは崩壊寸前だ。オフに大量13名の選手が退団したのに対し、新たに獲得した選手はゼロ。現在はわずか18名でトレーニングに励んでいるという。経営面の改善を図れなければ、スーパーリーグからの除外が現実味を帯びてくる。クラブは中国の大企業をリストアップしてセールスに勤しんできたが、ついに世界に広く"買い手"を求めるに至ったのだ。

 
 新型コロナウイルスの感染拡大のため、スーパーリーグの開幕はいまだ見通しが立っていない。中国全国紙『新京報』は「超級の再開時期が確定したときに、あらためて天津天海への採決が下されるだろう。それまでに新オーナーが見つかっていなければ、クラブは消滅への道を辿るかもしれない」と見込んでいる。

 はたして、天津天海の未来を明るく照らす救世主は現われるのだろうか──。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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